かつて日本に捨てられた日本人。いま朝鮮半島有事ならどうなるか

 

「これは、やはり、政府がきちっとやるべき問題なんです」

公使の高橋雅二は、着任して挨拶にくる各企業の幹部に、常々「日本政府は何もできない日本国からの飛行機は飛んでこない」と説明していた。

たとえば、ほかの国では、エマージェンシー(緊急事態)になったら、やって来るパイロットは皆、軍人なんですよ。通常のフライトはキャンセルされて、全部、特別便にして軍人が操縦してくるんです。決して、民間のパイロットではありません。しかし、日本の場合は、自衛隊の人が海外に出ちゃいけない、ということがあり、そういうことがまったくできないんです。
(同上)

外務省は日本航空に救援機派遣の検討を依頼していたが、日航は「安全が保証されない」として、乗り入れは断念した。高橋は「私は日本航空の責任にするのは、酷だと思うんですよ。これは、やはり、政府がきちっとやるべき問題なんです」と述べている。

高橋公使も、その上司の野村豊・駐イラン大使も、それまであらゆる機会に「何か起こったときは日本人を頼みます」と各国の大使に頭を下げていた。これに対して各国の大使は、こう答えていた。

なんでそんなことで、日本の大使が頭を下げなければいけないのですか。何かあれば、日本も自分の国で救援機を出すのが当たり前でしょう。なんなら、軍用機も出せばいいではないですか。
(同上)

「(邦人)救出」は他国領土に踏み込む危険な任務」

なぜ、日本国は日本の救援機を出せないのか。左翼の反対で法整備が進まないからだ。たとえば、日本共産党の機関誌『赤旗』は、「邦人救出」への自衛隊の派遣について、次のような主張をしている。

「(邦人)救出」は「(邦人)輸送」に比べ、「武器の使用が想定される場合が多い」(3月13日配布の政府資料)とされるように、他国領土に踏み込む危険な任務です。

 

そもそも在外法人保護は在留先の政府に一義的責任があります。待避が必要な場合は渡航情報などをもとに自主避難し、さらに緊急の場合は日本政府が民間機などをチャーターする方法もあります。
(『赤旗』2015年4月4日)

テヘランで「日本はなぜ救援に来てくれないのか」と叫んだ人々から見れば、こんな物言いこそ現実を無視した左翼的空想の産物である。そもそも「他国領土に踏み込む危険な任務」と言うが、その地に取り残された在留邦人たちの危険はまったく念頭にないのである。

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