【書評】「やられたら倍返し」たった1000億で北から日本を守る術

 

巡航ミサイルの脅威

長射程ミサイルには弾道ミサイルのほかに巡航ミサイルがある。弾道ミサイルは弾道(放物線)を描いて超高速で飛ぶもので、核を搭載した大陸間弾道ミサイルはこの一種である。

巡航ミサイルは低空飛行で山などを避けながら、自由自在に進路を変えつつ飛翔する。弾道ミサイルよりも速度は遅いが、小型かつ低空飛行のため、レーダーでもはるかに補足しにくい。

アメリカの巡航ミサイル・トマホークは最大射程距離1,700キロを飛び、最新型では狙った目標から5メートル以内の命中精度を持つ。1991年の湾岸戦争で投入されて以来、数々の実戦で使用されてきた。湾岸戦争では進攻に先立って、水上戦闘艦と潜水艦から合計288基が連射され、イラクのレーダーシステム、対空ミサイル、それに独裁者の本拠地を叩くのに使われた。

その命中精度の良さから、たとえば金正恩の潜んでいる場所や、北朝鮮軍司令部、ミサイル基地などをピンポイントで叩くには、最適な兵器なのである。

また、価格も1基1~1.5億円程度と安い。F-2戦闘機で敵基地攻撃をするには1機で120億円かかるが、トマホークなら100基も配置できる。しかも搭載する通常弾頭の破壊力は、F-2に搭載できる爆弾の2倍程度である。したがって、コスト1/100で破壊力2倍、コストパフォーマンスは200倍となる。

トマホーク800基による報復的抑止力

このトマホークを海上自衛隊の艦船に800基ほど配備し、北朝鮮が我が国にミサイルを撃ち込んだら、それを一斉に発射して金正恩の生命はない、と分からせて、報復的抑止力を働かせよう、というのが北村氏の提案なのである。この提案は優れた実現可能性を持っている。

まず、現在の海上自衛隊の水上艦、潜水艦の発射装置はトマホークと互換性があり、ハードはそのまま使用できる。ソフトとしてトマホーク攻撃計画システムと発射制御管制システムを導入するだけで良い。

装備できる水上艦・潜水艦も十分だ。合計で最大で1,132基のトマホークが装備できる。たとえば「あたご型」自衛艦は2隻で各96基、「こんごう型」4隻で各90基、等々、各型合計で27隻ある。

トマホークの最大射程距離は1,700キロなので、日本海側はもちろん太平洋側沿岸を航行する艦艇から発射しても、北朝鮮全域をカバーできる。

破壊力も十分である。トマホーク1基で1,000ポンド爆弾1発分の破壊力を持つが、これは北朝鮮のノドンやスカッドの半分である。したがって、ノドンやスカッドを100基撃ち込まれた場合、トマホーク200基で同等、800基を撃ち返せば「4倍返し」となる。

しかも、飛来した北朝鮮ミサイルの相当数は迎撃ミサイルで撃ち落とせることを考えれば、ミサイルの撃ち合いでは北朝鮮は到底、分がない、という事になる。

コストも圧倒的に安い。前述のようにトマホークは1基1~1.5億円程度なので。800基配備しても1,000億円ほど、年間防衛費の約2%程度でしかない。

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