主観的にモノゴトを見ると、最初の「毎日3時間残業」で感情が揺さぶられて、さらに次の、「でも残業代は払えない」を聞いた途端に、
■ ざけんなよ、そんなのムリに決まってるじゃんか
って反応しちゃうんです。こういう感情むき出しの会話は交渉じゃありませんから。なぜ感情むき出しになったのかというと、あなたが状況を主観的に見たからなんです。
客観視が出来ていたら、先ほど書いたように思考がグッと広がるんです。グッと広がれば、それに対応して、相手に投げかける質問の質と量が変わってくるわけですね。
交渉で有利に立つためには、相手の持っている情報を全部手に入れて、こちらの手の内は出来るだけ相手に見せない、という戦術が必要になるんです。そのためにはたくさん質問を浴びせかける、そんな質問を見つけるために、相手にドンドン話をさせる、そして自分の感情を立ち上げないために状況を客観視する、という一連のスキルが必要になるんです。
これは一種のゲームですから。
先ほどの例では、「残業代は払えない」という相手の言葉を客観視をしてみると、
- これって本当に会社の命令なのか?
- あのプロジェクトで予算が足りなくなったのか?
- そもそもなんで自分に依頼が来たんだろう?
なんて疑問が出てきますよね。あとはこの質問の答えをどうやって引き出すかという思考のゲームをやるんです。質問をすればするほど、さらに次の質問が生まれて来ますから。このキャッチボールを何度か繰り返したら、喋るのは相手だけで、こちらはひたすら聞いているという状況になりますよね。まさにこれが、相手の情報だけ手に入れて、こちらの情報は差し出さないという結果を生むのです。
交渉はこういう状態になった後にやるものなんです。
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