中国人は、劉さんを知らない!?
ところで、ここに驚くべき事実があります。世界的偉人・劉暁波さんのこと、中国人はほとんど知らないのです。
劉氏は国際舞台で中国に恥をかかせたわけだが、本国でその名を知る中国人は少ない。がん治療のため国外に移ることが可能かをめぐり、中国の病院の言い分に外国人医師たちが反論したことも、香港では釈放を求めて徹夜の集会が行われていたことも、中国国内では徹底した検閲体制のために国民はほとんど何も知らされていなかった。自分たちの国で、ノーベル平和賞受賞者が死につつあったというのに。
恐ろしいことですね。こんな国が、GDPと軍事費で世界2位なのです。
選択的記憶喪失は中国の国家政策だ。そして劉氏の投獄から死亡に至るまで、政府は彼の記憶を消し去ろうと一生懸命だった。家族や友人たちがなかなか面会できないように、自宅から約600キロ離れた刑務所に収容した。妻の劉霞さんが置かれた自宅軟禁はあまりにも抑圧的で、彼女は次第に体と健康を害されていった。ノルウェーに対する中国の懲罰行動は苛烈で、今やノルウェー政府は中国の人権状況や劉氏のノーベル賞について言及を避けるほどだ。
徹底していますね。
結局、劉さんが勝つ
しかし、グレイシーさんは、「結局勝つのは、劉さんだ」と考えています。
しかし存命中と同様に死してなお、劉氏は消し去られたりしない。
劉暁波氏の苦しみは終わった。座る者のいない空の椅子と同様、空になった病床の映像が、これからの中国を怯えさせる。そして中国政府はこれからも、劉氏の後に続く人たちを脅し、迫害し、懲罰を与え続けるだろうが、このノーベル平和賞受賞者の記憶を消し去ることはできない。81年前のナチス・ドイツが、自らの恥を決して消すことができなかったのと同じように。
キャリー・グレイシーさん、立派です。世界的に影響力のあるBBC。これからも、中国の現状を、正しく伝えていただきたいと思います。
ちなみに、オシエツキーさんは、1938年に亡くなりました。ナチス・ドイツが滅びたのは、その7年後でした。ノーベル平和賞受賞者・アンドレイ・サハロフ博士は、1989年に亡くなりました。ソ連が崩壊したのは、その2年後です。
劉さんは、2017年に亡くなりました。中国の共産党一党独裁体制は、何年後になくなるのでしょうか。