それから2か月後の6月4日、愛媛県と今治市は共同で国家戦略特区提案を申請した。事業主体となる予定の加計学園が主導しながら、提案者に名を連ねなかったのは、おそらく首相との関係を詮索されたくない官邸の指示であろう。2016年3月の京都府の特区提案では京都産業大学が共同提案者になっているのだ。
特区提案後、愛媛県と今治市が特区ワーキンググループのヒアリングを受けたさい、加計学園の幹部が同席していたことも朝日新聞の報道で明らかになった。
議事要旨を見る限り、出席者名簿に加計学園の名はなく、資料をもとに学園側が発言したにもかかわらず、その内容は記載されていない。はからずも議事要旨が、「加計隠し」の証拠になったのである。
「議事要旨の改ざんではないか」と追及する民進党議員に対し内閣府が苦し紛れの返答を繰り返すシーンは、安倍内閣の行き詰まりを象徴するかのようだ。
内閣府は「提案者(愛媛県、今治市)が説明補助者(加計学園)を連れてきた。補助者としての非公式な発言は議事録にも議事要旨にも記載しないことになっている」と繰り返すばかり。
「改ざんの疑いを晴らすために議事録を公表するべきではないか」との問いには、ワーキンググループの八田達夫座長の了解が必要として明確な回答を避けた。加計学園が資料を出したかどうかについても答えない。会議そのものがブラックボックスになっている。
内閣府と諮問会議、ワーキンググループは自らの正当性をはっきりさせたいのであれば、すべてを明らかにするべきだ。隠したいことがなければ公開できるはずである。それをせずに、あえて闇の中に置いておこうというのは、なぜなのか。どんな不都合なことが話し合われたのか。
加計学園の獣医学部新設に安倍首相の意向が働いていることは、文科省の課長補佐が関係部署との情報共有のために作成した文書でも明らかだ。心底から安倍首相が国家戦略特区の事業として加計学園の獣医学部新設がふさわしいと思っているのなら、何も隠しまわる必要などないだろう。
なぜ国家にとって、獣医学部の新設が必要で、しかも、今治に加計学園なのかを、国民の誰でも腑に落ちるように説明してくれればいいのである。国会の答弁を聞いても、諮問委員会やワーキンググループの主張によっても、いっこうに納得できない。それえゆえ、親友への特別待遇ではないか、権力の私物化ではないか、と疑惑が深まるのだ。
これまでのように、時が経てば国民は忘れると高をくくってはいられまい。閣僚の顔ぶれを少し変えても、しょせん無駄なこと。つまるところ、安倍首相自身の人間性が問われているのである。
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