再発は防げるのか。年金機構の内部報告書、新聞各紙はどう伝えた?

 

5年前の対応の域を出ない対策

【東京】は1面左肩に記事を載せ、関連は2つ。3面には記者による短い解説(本来は1面に載せるはずのもの?)があり、28面第2社会面には受給者のリアクション。

1面記事は、機構が自ら指摘する「組織としての一体感の不足」について、報告書が「厚生労働省の官僚と地元採用者との間に意思疎通がなく、責任の所在もあいまいな旧社会保険庁時代の体質がいまだに続く『構造的な問題』がある」と書いていることを取り上げている。

uttiiの眼

記者の解説は本来、1面記事の真横に付けるべきものだったのだろう。何らかの理由で3面に飛んできた。

まず、事件の要因として報告書が「情報セキュリティー体制の弱さ」を挙げ、それに加えて「組織内の風通しの悪さ」など体質的な問題を指摘していると書いている。順番を意識したこの書き方は正しいように思う。また、体質に関して機構が、社保庁時代から指摘されてきたものだと認め、完全脱却へ取り組む姿勢を示したとするが、「本部と現場間の人事異動の活発化や、顧客の声を直接聞く現場職員の声をすくい上げるなどの具体策は、5年前の機構発足時から進めてきた対応の域を出ない」と厳しく指摘している。

体質を云々するのであれば、社保庁時代の体質を引きずったのは何故だったのかという問題意識なくしては意味がないという、至極当然のことを、この解説は示している。

 

uttiiの電子版ウォッチ』2015/8/21号より一部抜粋

著者/内田誠(ジャーナリスト)
朝日、読売、毎日、東京の各紙朝刊(電子版)を比較し、一面を中心に隠されたラインを読み解きます。月曜日から金曜日までは可能な限り早く、土曜日は夜までにその週のまとめをお届け。これさえ読んでおけば「偏向報道」に惑わされずに済みます。
≪無料サンプルはこちら≫

print
いま読まれてます

  • 再発は防げるのか。年金機構の内部報告書、新聞各紙はどう伝えた?
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け