再発は防げるのか。年金機構の内部報告書、新聞各紙はどう伝えた?

 

郷原さんと岩瀬さん

【毎日】は1面トップ。「情報流出「組織に原因」」「年金機構 改革『ゼロから』」との見出し。リードは、「消えた年金問題などで指摘された組織の問題が依然改善されていない現状を自ら認めた」とし、「ゼロベースから」組織改革に取り組むとしている点を強調。この記事の末尾には、「対サイバー攻撃政府要員を増強」の記事も付けられている。今回、年金機構のシステム全体を管理できる「認証サーバー」を管理する権限も盗まれていたという。対サイバー攻撃要員の増強は、中央省庁以外の特殊法人や独立行政法人のシステムを段階的に監視対象にすることを柱としたサイバーセキュリティー戦略案の決定と歩調を合わせた形。

3面に解説記事。こちらは「『素人』が対応 被害広がる」との見出し。今後、機構自身が総点検する様々な論点の一覧と、事件の時系列が表になっている。

uttiiの眼

《毎日》も他紙同様、機構が「使命感に欠けた」とか「社保庁体質」といったことを問題にする。しかし、他方、解説記事の大見出しが「素人」による対応を問題にしたり、サイバー攻撃に備えた具体的なルールがなく、訓練も行われていなかったことなどを問題にしたりしているように、攻撃に対抗するシステムが不十分だったことを様々なところで強調しているように見受けられる。この方が、私の感覚と近い。

解説記事の最後のブロックで、年金業務監視委員会の委員長だった郷原信郎弁護士と、年金問題の専門家でもあるジャーナリストの岩瀬達哉さんに意見を聞いているのが非常に良い

報告書自体の問題を指摘する郷原さんは、「具体的に何が問題か明らかでない。ルールが現場に周知されるまで時間がかかるといったシステムの現状に触れていない」と批判、さらに「何が社保庁時代の問題で何をひきずっているのか書かれていない。機構だけが悪者になり、国民の大事な年金業務を確実に行う厚生労働省と政府の責任が問われない流れにならないか」と危惧。全くその通りだと思う。

また岩瀬氏は「現場の声をくみ上げてルールをつくり、現場を把握する仕組みを確立するために職場ごとの業務報告などの仕掛けを浸透させていかなければならない」と指摘。これも首肯できる話だ。少なくとも、《朝日》が書いていることと比べ、遙かに大人の議論がなされているように思う。

print
いま読まれてます

  • 再発は防げるのか。年金機構の内部報告書、新聞各紙はどう伝えた?
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け