喘息で死ぬ日本人は年1000人超。ここ10年減らぬ世界の喘息死事情

 

最近10年間は減っていない世界の喘息死

喘息死が1990年代前半に増加した理由の1つに、ベータ刺激薬という、吸入気管支拡張薬の過剰使用が挙げられています。このタイプの気管支拡張薬の吸入を続けているとだんだんと気管支拡張作用が弱くなり効きにくくなります。そして徐々に気道の閉塞が進み、逆に窒息をきたしてしまうリスクが高くなるのです。

最近発表された研究結果から、若い人に限ってみると、世界的な喘息死の減少傾向がここ10年はプラトーになっているとの警告が発せられました。34歳までの若い人について喘息死を調べたその研究によると、1993年から2006年までに、約60%も喘息による死亡が減りました。しかしながらそれ以降はほとんど減っていないのです。

世界での1990年代後半から2000年代前半までの喘息死の減少をもたらしたのは、やはり吸入ステロイドの世界的な普及でした。しかしながら、2000年代後半にプラトーになった理由は、この吸入ステロイド剤の普及の限界と考えられます。

そこにはいくつかのバリアがあります。患者の健康や病気に対する認識が最大のバリアです。ヘルスリテラシーという概念があります。健康管理のために必要な知識を取り入れて実行する能力です。喘息の患者さんで、中等症以上であれば吸入ステロイドの毎日の使用を行うためにはその理解と実行力をつなぐリテラシーが必要です。

また、喘息の増悪因子としては喫煙があります。軽症でもすべての喘息患者では禁煙を実行すべきです。受動喫煙を避ける行動も必要になります。また、大気汚染も気道に悪影響を及ぼします。喘息患者には、大気汚染のひどいエリアに行くことを避ける必要もあります。

ヘルスリテラシーを向上させるには子供の頃からの教育が大切です。学校教育に喘息についての学習を導入するとよいでしょう。また、メディア等での教育番組でも、喘息についての知識を啓蒙する内容をぜひ取り入れて欲しいものです。喘息の知識の一般的な普及を進めていくために、私もこのメルマガで喘息を今後も定期的に取り上げ続けたいと思います。

文献 Ebmeier, SJ, Thayabaran, D, Braithwaite, I, B?namara, C, Weatherall, M, and Beasley, R. Trends in international asthma mortality rates. (published online Aug 7.)Lancet. 2017; http://dx.doi.org/10.1016/S0140-6736(17)31448-4

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