ロシア首相が初の択捉島入り。実効支配を進める露に日本はどうする?

 

米国内の思想争い

現在アメリカには、大きく2つの「対ロシア戦略観」が存在しています。

1つは、冷戦直後に策定された「一極支配を進める」戦略。この戦略によると、アメリカの仮想敵は、中国、ロシア、ドイツ、日本(!)。この4国が、アメリカの「ライバル国になるのを阻止すること」が重要。

つまり、「アメリカ以外の『極』が現れるのを阻止する」

この戦略を支持する人たち(たとえばネオコン)は、「アメリカには、中国とロシアと同時に戦える力がある」と考えています。

もちろん、「戦う」というのは、「情報戦」「経済戦」も含めます。というか、中ロは核大国なので、「情報戦」「経済戦」がメインと考えるべきでしょう。

もう1つは、ミアシャイマー、キッシンジャー、ロバート・ゲイツ、ルトワックさんたちの「リアリスト的」戦略観。

「中ロ同時に敵にまわすなんて愚かだよね。それより、ロシアと和解して、中国叩きに集中しよう。なんやかんやいっても、アメリカ最大の脅威はロシアではない。わが国の覇権を脅かす可能性があるのは、中国だけなのだから」

というもの。つまり、アメリカはロシアと和解し、アメリカ、日本、欧州、オーストラリア、東南アジア、インド+ロシアなどで、「中国包囲網」をつくろう。

どっちがいいかは、賛否両論あるでしょうが、「どっちの戦略を採用すれば、勝ちやすい?」と質問すれば答えは明白でしょう。中国とロシアを分裂させ、ロシアを自陣営に引き入れれば、中国に勝つのは相当容易になります。

「AIIBショック」の後は、「リアリスト的戦略観」のほうが優位にたった。それで、ロシアとの関係を少し改善させ、中国叩きに専念した。

ところが、日本政府と同じでアメリカも揺れるのですね。

「ロシアとなんか和解できるか! わが国は、中ロを同時に敵まわしても勝つ力がある!」と自国のパワーをを過大視する勢力がまた優勢になってきている。米ロ関係の現状は、こういう感じなのです。

日本にとって、ロシアのあるべき姿とは

では、日本はどうするべきなのでしょうか?

世界がまさに「戦争前夜状態」にある中、日本はロシアに対し「北方4島を返してもらうことしか考えてない」。

これは、「世界情勢がわかっていない」「大局が理解できていない」証拠で、とても心配です(もちろん、北方4島の返還を実現することは超重要です)。

日本の脅威は、「日本には沖縄の領有権がない!」と宣言している中国1国です。この国は、「中国、韓国、ロシア、『アメリカ』で『反日統一共同戦線』をつくる」という戦略をたて、実際に行動している。

●必読証拠「反日統一共同戦線を呼びかける中国」 

結局日本の安全保障上の課題は、「中国をどうするか?」という一点につきるのです。

尖閣(沖縄も)をめぐって戦争が起こると仮定します。その時、中国の戦略どおり「日米関係」が破壊されていたとします。アメリカは日本を守りたくないので、

  • 日本 対 中国

の戦争になってしまった。通常兵器の戦いならひょっとしたら勝てるかもしれませんが、中国が、「尖閣を渡さないと核を使うぞ!」と恫喝したら、「そんなことをすれば国際世論が許さないぞ!やれるものならやってみろ!」と切り返せるでしょうか?

中国は、「国際社会は中国に制裁できないよ。だって、中国は安保理の『常任理事国』で『拒否権』をもっているからね」と開き直るかもしれません。

いずれにしても日中戦争というのは、非常に分が悪い。

では、

  • 日本、アメリカ 対 中国

の戦争なら? これは圧勝できますね。だから、日本最大の課題は、「日米同盟を強化すること」なのです。

では、

  • 日本、アメリカ 対 中国、ロシア

なら? これは、どっちが勝つかわかりません。

いずれにしても、日本は、

  • 日本アメリカ 対 中国

の戦いにもっていくことが必要。こういう形を保っていれば、中国は勝てないので、戦争が起こりにくくなります。ですから、日本は、中国とロシアを分裂させて、中立化させることが重要なのです。

ちなみに、世界3大戦略家のルトワックさんは、「ロシアを中国包囲網に取り込む重要性」を繰り返し説いておられます。引用しておきましょう。ルトワックさんは、日本が独立を維持できるか、それとも中国の属国になるかどうかについて、以下のように述べています。

もちろん日本自身の決意とアメリカからの支持が最も重要な要素になるのだが、ロシアがそこに参加してくれるのかどうかという点も極めて重要であり、むしろそれが決定的なものになる可能性がある。>(「自滅する中国」 188p)

ちなみに、ルトワックさんの「自滅する中国」は、日本の指針を知りたい方必読です。是非ご一読ください。

print
いま読まれてます

  • ロシア首相が初の択捉島入り。実効支配を進める露に日本はどうする?
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け