実は「安保関連法案」を嫌がるロシア
最近、複数のロシア人から、「安保関連法案についてどう思う?」と聞かれました。この件、ロシアのテレビでは全然報道されていないので、驚きました。
私は、「中国が沖縄を自国領と主張しているから、対中国ですよ」と毎回答えています。しかし、どうもロシアは、「安保関連法案」を恐れているのですね。
理由はわかります。
2014年3月の「クリミア併合」以降、世界の構図は、
アメリカ、欧州、日本、ウクライナ 対 ロシア、中国
という感じになりました。上の構図で、ロシアは「日本の脅威」について考える必要がなかった。なぜなら、日本は「集団的自衛権行使」を認めておらず、自国が攻められた場合以外、米国と一緒に戦うことができない。
ところが、「安保関連法案」が成立すると、「日本がアメリカと一緒に戦える」道が開けることになります。
そして、そのアメリカは、今現実にウクライナを支援することでロシアと戦争している(一応、半年前に停戦合意したが)。
つまり、ロシアから見ると、
- アメリカの敵ナンバーワンは、ロシアである
- ロシアの敵アメリカは、GDP世界3位の日本と一体化してより強力になる
だから、「安保関連法案」をロシアは嫌がるのです。
今回のメドベージェフ首相の「北方領土訪問」。これは、ロシアの「危機感のあらわれ」と見てよいでしょう。「日本は敵のアメリカとますますひっついているので、国境を固めなければ」と。
米ロ関係の現状
ところで、2014年に比べると、アメリカのロシアバッシングはゆるくなっています。理由は、2015年3月の「AIIB事件」。
イギリス、ドイツ、フランス、イタリア、オーストラリア、イスラエル、韓国などが、アメリカの制止を無視し、中国主導の「AIIB」に参加した。
これでアメリカは、中国の影響力の大きさに仰天した。「敵ナンバー1」は、ロシアから中国に移った。そして、2015年の5~6月にかけて、「南シナ海埋め立て問題」で米中関係が劇的に悪化したのです。
ロシアは、アメリカからの攻撃が止まって、「一息つけた」感じでした。
しかし今、米ロ関係が、再び悪化してきました。ウクライナが「臨戦態勢にもどりつつある」と、こちらでは報じられています。テレビニュースを見ると、「アメリカ批判」「ウクライナ現政権批判」がたくさん流れています。
ロシア人は、「現在戦争中」という意識なので、制裁で苦しくても「プーチン批判」をしません。