アニメ製作現場の窮状が改善されない「クールジャパン」の現実

 

海外展開が主眼の「クールジャパン戦略」

さて、アニメを含む日本産の映像コンテンツは、日本が国を挙げて支援している点でも知られていますね。いわゆる「クールジャパン戦略」は、日本国内の人口がピークアウトしていることなどから成長が横ばいとなっている国内のコンテンツ産業を、海外展開によって成長させようという試みとされています。

経済産業省のウェブサイトから参照できる「コンテンツ産業の現状と 今後の発展の方向性(2015年7月版)」(*6)では、「クールジャパン戦略」を実現する具体的な施策が以下のように記されています:

【流通フェーズ】
1. ローカライズ・プロモーション支援
2. コ・フェスタ(コンテンツ関連イベント)
3. クールジャパン機構(リスクマネー供給)
4. 政府間対話
5. 海賊版対策

 

【マーケティング支援】
6. 留学生アンバサダー

 

【基礎整備】
7. プロデューサー人材育成
8. コンテンツ技術戦略

ここで注目すべき点があるとすれば、それは「クールジャパン戦略」の主眼は海外マーケティングと輸出行為のみに据えられているということです。逆に言えば、コンテンツ産業の構造を整備し、改善することは「クールジャパン戦略」の柱には含まれていません。なぜなら「我が国のコンテンツは『クールジャパン』として海外からも高く評価されており、コンテンツ産業は、海外展開を通じた成長を見込める有望な産業」だと予め目されているからです。(P.3冒頭参照)

コンテンツ産業の国内市場が世界第2位を誇る日本の国家的戦略は、既存の産業の規模をプロモーションによって拡充することにあります。産業構造を改革することではないのです。それこそ、事情を知る業界内部の人間が自ら行うべきことだと言えます。当然といえば当然のことでしょう。

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