「五輪エンブレム撤回」新聞各紙はどう伝えたのか?

 

責任回避

【読売】は1面に続き、解説面でやはり撤回に至る経緯を説明している。佐野氏の「原案」公表で劇場ロゴの方との類似性は否定できたと安心していた組織委は、エンブレムの活用例として提出されていた画像が、ネット上の個人サイトのものを流用しているとの疑いが出て急展開する。「私どももそれを見て、全く違った新たな事態が起こったと認識した」(武藤氏)という。その後、さらに、「原案」も模倣ではないかとの指摘が出た。

後半は「スポンサー企業」への衝撃について。《朝日》と同じく、経済同友会の小林喜光代表幹事が取材を受けていて、こちらでは「五輪まで時間はまだあるので、(企業には)大きなダメージにならない」と述べる一方で、「対外的に恥ずかしい」とも。

uttiiの眼

《読売》による撤回経緯の説明の中心は、活用イメージ例として佐野氏から提出されていた2つの映像が、ネットで公開されているものの無断流用であったことに置かれている。武藤氏の説明は確かにそうだったのだが、これはどうだろうか。佐野氏が手がけた他のデザインに対する「パクリ」疑惑にしても、全部、状況証拠にしか過ぎない。どこまで行っても、問題の核心は、いったんは採用されたエンブレムのデザインがリエージュの劇場のロゴと酷似していること、さらにデザインの「原案」の方は、ヤン・チヒョルト氏の展覧会ポスターのロゴと、これまた酷似していること、この2点のはずだ。この2点について、盗作あるいは模倣を否定できないことが、撤回の理由であるべきだが、そうなっていない。結局、「空気」が作られ、「国民の理解得られぬ」と責任を転嫁した上、バッサリ佐野氏作品を切ることになっている。国民が強く批判していることはその通りだが、だから佐野氏のエンブレム撤回ではないだろう。《読売》は責任問題をキチンと追及していない

またしても、誰も責任を取らない気でいるようだ。

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