トヨタが実行し町工場が実行してないもの。利益の差はココにある

 

利益の獲得の方法

利益向上のためにもっとも即効性のある方法はコスト削減です。一般的に業績が悪化して行き詰まって取る方法は、報酬や給料のカットです。ここまで行くと極限というより仕方がない状況で、ここまで行かないように普段のムダの排除生産性の向上が行われなければなりません。

もちろん、利益獲得のためには売上の向上が常套手段です。売上向上は高度成長期、バブル期までは、日常的な努力で適えられていました。ところが今は、戦略経営が声高に唱えられており、情報や知識の高度活用や最大の経営資源である人材の重要性がさらに注目されています。

話を戻して、利益の獲得に即効性のあるコストダウンに話を戻します。まず最初に基本として取り組まなければならないのは「3S(整理・整頓・清掃)」です。この“3S”がもっとも重視され実行されているのは最大利益を計上しているトヨタで、もっとも行われていないのは多くの町工場です。

京セラでは材料の仕入は、当用買(必要な都度購入)が行われています。大量仕入れは確かに仕入値引きなどのメリットがあります。しかし、3Sから見ると不都合の要素が混在しています。場所を塞ぎそして場所を取り、選別・運搬に手間がかかるわ、陳腐化するとゴミになるわで、不良コストの固まりになる傾向が多くあります。

事実、町工場でよく見かけるのは材料・部品が通路にうず高く積まれ、貸倉庫にまで古い不良在庫の山で、作業効率は悪いわ、余計な倉庫代は払うわ、大切な資金は循環せず、これでもかこれでもかのムダの連続です。1円のコストカットさえ勝敗の分かれ目になるにもかかわらず、業績の悪い企業ほど資金の放漫な無駄遣いが行なわれています。

これに対してご存知のようにトヨタは、真逆でコストカットを徹底しています。ジャストインタイム(必要なものを、必要なときに、必要なだけ)方式で材料・部品在庫の不必要な余分は一切ありません。また、3Sと動作管理で寸分の時間ロスも排除しています。

さらにコストダウンについて「カイゼン」に話をすすめます。仕事の現場では、働く人でなければ感じることのできない、また考え付かないカイゼンのアイディアが偏在しています。

これらのアイディアのことを「垂れ下がった果実」と言い、働く人が話す気になればすぐさまコストダウンや収益改善がはかられます。

東西を問わずエクセレント・カンパニー(優良企業)は、この「垂れ下がった果実」の収穫が巧みです。トヨタは「乾いた雑巾を絞る」ように、積極的に従業員の知恵と知識を活用して生産性の向上をはかっています。アメリカのGEは「シックス・シグマ」でこれを行っています。

売上の向上については、カイゼンだけでは及ばない領域に入ります。戦略的革新(イノベーション)経営、知識経営など、ミッションやコンセプトの策定からはじまるマネジメントの実行が求められます。マネジメントは、科学の部分も含みますが、深い人間理解も求められ経営者が行わなければならない総合アートです。

image by: Shutterstock

 

戦略経営の「よもやま話」
著者/浅井良一
戦略経営のためには、各業務部門のシステム化が必要です。またその各部門のシステムを、ミッションの実現のために有機的に結合させていかなければなりません。それと同時に正しい戦略経営の知識と知恵を身につけなければなりません。ここでは、よもやま話として基本的なマネジメントの話も併せて紹介します。
<<登録はこちら>>

print
いま読まれてます

  • トヨタが実行し町工場が実行してないもの。利益の差はココにある
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け