「日本が本当に反省しなければならないのは、戦前ではなくて戦後である」
2000(平成12)年3月、李登輝総統の後任として陳水扁総統が誕生した。台湾人で、しかも独立を標榜する民進党から生まれた総統だった。ようやく台湾に帰れるようになった。8月28日、2人と長女を乗せた中華航空機が台湾の大地に着陸した。周さんにとっては40年ぶりの帰国である。
前総統の李登輝氏は2人を自宅に招いて温かくもてなし、ねぎらってくれた。周さんは「李登輝総統が勇気を持ってこの民主化、自由化の改革を行われたおかげで、私は生きてるうちに台湾に戻ることができました」と挨拶した。
日本統治時代に育った李登輝氏は「日本人がその理想をつぎ込んで育成したのが、私と言う人間なのです」と語っている。言わば戦前の「日本精神」が李登輝氏の体を借りて、台湾の民主化と自由化を進めたとも言える。
「日本精神」とは戦後の国民党政治への不満と恐怖の中で日本統治時代の公正な巡査、教育熱心な先生などの生きざまを懐かしんで生まれた言葉である。その反対が、不公正、無責任、欺瞞、金が万事、を意味する「中国式」である。
敗戦で台湾を放棄した日本は、中国と国交回復した昭和47(1972)年にも「台湾は中国の一部」との中国の主張を認めてしまった。日本は二度、台湾を捨てたことになる。「日本が本当に反省しなければならないのは、戦前ではなくて戦後である」と金美齢さんは言う。
そして今、台湾と日本は同じく大陸からの過去最大の脅威にさらされている。蒋介石政権からの「台湾独立」を成し遂げた台湾人から、現代の日本人は「日本精神」を学んで、ともに力を合わせて独立を守らなければならない。
文責:伊勢雅臣
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