Tさん:運転手の方は裁判官にも「こんなことが許されまくったらクルマを運転できなくなる」とか「古いままの法律をなんとか直せないのでしょうか? 自転車側が交通ルールを守らず事故発生の引き金を引いたのに弱者というだけで過失割合が変わるとかおかしいと裁判官も思わないんですか? これがクルマ対クルマだったら、後方確認ミスで車線変更してはみ出してきたクルマ側に過失が多く生じるわけですよね。自転車だって軽車両なのに弱者な立場だからと過失割合がクルマ側に多く載せられるのは不思議すぎる法律です」など戦いまくったそうなんです。
この事故の状況は、例えばクルマ同士が交差点で片方が一時停止無視して飛び出してしまい、優先道路を走っていたクルマと接触したとします。その場合はクルマとクルマなので飛び出してきたクルマ側に大きな過失が生じます。これがクルマ対自転車の場合はどんなに自転車側が一時停止無視して飛び出しても弱者救済措置が働き、優先道路走っていたクルマに過失が7割被されてしまうんです。私はこのような交差点での事故を散々取り扱ってきましたが、いつも心の中では「クルマの方が気の毒」「自転車は当たり屋と一緒だよな」って思いながら事故処理に務めていました。
一時停止無視で飛び出して接触事故を起こす自転車側の過失が3割って……本当にどうかしていると思うんです。絶対間違っていると思います。もっと全国の警察署から現場の声としてお上へ届きまくれば少しは変わるような気がするんですね。
自転車に運転免許制度を今から施すのには超えなくてはいけない壁が沢山あって現実的ではありません。日本を変えようと思う警察官がもっと増えてくれれば、そして現場からの声を大にして届けられるようになると変えられる……私はそう思い続けています。
道路交通法を改正して自転車に対し厳しくなったとか言われていますけど、事故処理を担当していた私から言わせてもらえば「あんたらがもっと安全運転に務めれば発生しない事故ばっかあるんだよ!」と魂の叫び、いや、遠吠えをしたくなる時もありますね(苦笑)。スマートフォンいじりながらの自転車操縦している人が多すぎます。イヤホン付けて自転車乗る人は昔から多いですが、イヤホン+スマートフォン操作な最悪すぎる自転車乗りだけは絶対私も許しません。
吉田:感動しました。警察官という職に就いているんでしたらTさんみたいに自転車の事故に対して理不尽な処理させられているんだよなぁと思うほうが普通ですよね。で、裁判まで発展して、3年間戦った結果……過失割合は最終的にどうなったんですか?
(次回へつづく)
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