年金を前倒しで受給するのは損なのか?「16年8ヶ月」の分かれ道

 

また、よく話題になりますが、「本来の支給開始年齢から貰う人に対して、繰上げして早めに年金を貰う人はどこで年金総額が逆転するのか?」という疑問が上がります。これは、繰上げした時から16年8ヶ月が損益分岐点となり、16年8ヶ月を超えると繰上げしなかった人より総額は下回り続ける事になります。

どこから繰上げても16年8ヶ月が損益分岐点。つまり、上記の例の老齢厚生年金なら繰上げ請求月が平成29年12月(61歳1ヶ月)だから、16年8ヶ月後の平成45年7月(77歳9ヶ月)で損益分岐点を迎えて、平成45年8月からは本来の62歳から貰ってた人が年金総額が逆転します。

請求月から数えて16年8ヶ月。ちょっと計算してみると、老齢厚生年金は62歳から本来の90万円(月額75,000円)、11ヶ月前の61歳1ヶ月から繰上げたら老齢厚生年金850,500円(月額70,875円)。16年8ヶ月=200ヶ月。

  • 本来の場合→75,000円×189ヶ月(11ヶ月後の62歳から貰う)=14,175,000円
  • 繰上げた場合→70,875円×200ヶ月(本来の人より11ヶ月早い61歳1ヶ月から貰う)=14,175,000円となり、16年8ヶ月(200ヶ月)超えたら、本来の62歳から貰う人が逆転する。

また、老齢基礎年金も61歳1ヶ月から貰うから16年8ヶ月後の平成45年7月(77歳9ヶ月)が損益分岐点ですが、平成45年8月以降は本来の65歳から老齢基礎年金を貰う人が年金総額で逆転します。

計算すると、老齢基礎年金は65歳から本来の71万円(月額59,166円)、47ヶ月前の61歳1ヶ月から繰上げた老齢基礎年金543,150円(月額45,262円)。16年8ヶ月=200ヶ月。

  • 本来の場合→59,166円×153ヶ月(47ヶ月後の65歳から貰う)=9,052,398円
  • 繰上げた場合→45,262円×200ヶ月(本来の人より47ヶ月早い61歳1ヶ月から貰う)=9,052,400円となり、16年8ヶ月(200ヶ月)超えたら、本来の65歳から貰う人が逆転する。だから、この男性なら77歳8ヶ月以前に亡くなられるとすれば本来の支給開始年齢から貰い始めた人よりも年金総額は上という事になりますね。

ただ、毎月の年金額は結構減ってしまいますし、一旦年金の繰上げを請求すると取り消し不可になるので、正直言ってオススメはしませんが、そこは本人の意思次第であります。でも記事の冒頭でも言ったように、利用者は結構多い。請求時にデメリット面は年金事務所で入念に説明されますが、よく納得した上で年金の繰上げをやりましょう。

年金の繰上げ時の注意事項その他(日本年金機構)

※追記

通常の年金請求で取得する際の公的添付書類(住民票とか戸籍謄本等)は、普通は支給開始年齢到達日以降の取得で、取得時以降6ヶ月以内に発行されたものが有効です。しかし前も何度か書いては来ましたが、年金の繰上げ請求の場合は請求日以前1ヶ月以内に取得したものが有効となります。

まあ、単身者であれば住民票や戸籍は省略される場合がほとんどですが(今はマイナンバー記載ですが住基コード記載で添付書類を省略していた)、配偶者がいて将来配偶者加給年金が付く予定の人は世帯全員の住民票戸籍謄本所得証明書が今のところはまだ必要。

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佐賀県出身。1979年生まれ。佐賀大学経済学部卒業。民間企業に勤務しながら、2009年社会保険労務士試験合格。
その翌年に民間企業を退職してから年金相談の現場にて年金相談員を経て統括者を務め、相談員の指導教育に携わってきました。
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