今回の東海道新幹線車両に関しては、そのような「パニック」を回避しようという毅然とした姿勢が感じられます。これに加えて、私個人としては、このJR東海の姿勢にはもっと深いメッセージ性を感じるのも事実です。それは、仮にパニックを起こして「全車両の即時検修、即時部品交換」といった対応を取ってしまうと、そうした過剰な反応が日本だけでなく世界に拡大するという懸念です。
そうなれば、東芝がそうであるように、神戸製鋼の企業価値は更に大きく毀損されてしまいます。その上で、仮に同業他社であるJFEや新日鉄住金などでは引き受け切れないとか、そもそも企業存続のためには「リスク選好マネー」の調達が必要になるというような事態になってしまったらどうなるでしょうか?
シャープや東芝の例が思い浮かびます。仮に「どうしても出資者が必要」ということで、結果的に「リスクを取って買収ができる」勢力が、海外にしかいないのであれば、神戸製鋼はその独自の技術と一緒に、海外の手に渡ってしまう可能性が出てくるわけです。これは国策として避けねばなりません。
神戸製鋼のビジネスは鉄です。アルミなどの軽金属もやっていますが、本業は鉄です。鉄というのは、ソフト化の時代である21世紀の現在であっても、日本にとっては「国家そのもの」に違いありません。その一角を担うコベルコの、とりわけ技術が流出するということは何としても回避しなくてはなりません。
そのような最悪の事態は避けなくてはならない、そのためには、一被害者である側として、「パニックは起こさない」けれども「必要な補修を行いその費用の補償は要求する」という明確なメッセージを出すことが最適解、そのような判断を感じるのです。
また、この判断は、同じような「被害」を受けた全世界のメーカーやユーザーに対して、あるいはメディアに対して「問題解決の妥協点」を提案しているという見方もできるように思います。
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