スシロー、そうきたか。回転寿司をひっくり返す「海と空」の革命

 

このようにスシローは近年、単位あたりの価格が高い高付加価値のすしの販売に力を入れています。

例えば、「世界の海からいいネタ100円プロジェクト」では、チリの海でとれたウニを使った「濃厚うに包み」(1貫100円)を昨年11月から期間限定で販売したのを皮切りに、直近では今年11月15日から販売した、ケープタウン沖でとれたマグロを使った「特上赤身」とアラスカの海でとれたイクラを使った「塩いくら包み」を販売(それぞれ1貫100円)するなど、世界中から選りすぐりのネタを集めて100円で提供しています。

また、千葉県や大阪府といった一部の地域でとれた天然ものを提供するプロジェクトも展開しました。

それにしても、なぜスシローは高付加価値のすしの販売に力を入れているのでしょうか。

スシローなど大手回転ずしチェーンは1皿2貫100円といった低価格のすしを提供することで成長してきました。現在も成長は続き、大手は店舗網を拡大し続けています。業績が好調なところが少なくありません。

スシローを傘下に収めるスシローグローバルホールディングス(HD)の17年9月期の連結決算(国際会計基準)は、売上高が前年比5.9%増の1,564億円、営業利益は22.6%増の92億円です。純利益は2.2倍の69億円となっています。大幅な増収増益です。新規出店を推し進めたことが寄与しました。

こうして見ると、スシローの経営は順風満帆のように思えます。しかし、必ずしもそうとは言い切れません。というのも、17年9月期の既存店(一定期間の営業を経ている店)の売上高が前年比1.3%減と前年を下回ったからです。客数は1.3%減少し、既存店において客離れが起きています。

既存店において客離れが起きている大手回転ずしチェーンはスシローだけではありません。「くら寿司」や「かっぱ寿司」も同様です。くら寿司の17年10月期の客数は前年比1.6%減かっぱ寿司の17年3月期は6.5%減となっています。

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大手回転ずしチェーンは低価格を武器に成長してきました。しかし、店舗網が拡大するにつれて、大手同士で競合するケースが増え、競争が激化していったのです。価格競争に陥り、消耗戦を戦わざるを得ないケースが増えていきました。

というのも、回転ずしチェーン同士の戦いの場合、他の業態と比べて差別化しづらいという特徴があるからです。例えばラーメンであればスープで差別化することが比較的容易にできますが、すしの場合、同じネタであればどこのチェーンで食べても味は基本的に同じなので差別化が難しいと言えます。そのため、価格競争や消耗戦に陥りやすいのです。

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