「金正恩は韓国を倒す準備をしている」脱北兵士が決死の告白

 

「北朝鮮政権に期待することはない」

A氏が本格的に亡命を考えるようになったのは、2012年以降だったという。2012年は、金正恩が政権を取った年。最初は期待感もあった。金正恩治下では全て豊かになるという話も流れた。A氏も一時はこの言葉を固く信じていた。新しい指導者の若々しい覇気と穏やかな微笑に希望をかけたそうだ。しかし、現実は180度違っていた

「2012年になると全て豊かになるといったのに、2012年になっても、あまりにも情けなくて…」

金正恩政権の各種不正腐敗を知ったのもA氏の亡命に一役かった。無慈悲な内部粛清や党の不正に対する内密な情報は主に対北朝鮮チラシを通じて分かるようになったという。北朝鮮に向けて飛ばされる風船に込められたチラシや、中国から密かに入ってくるUSBメモリに金正恩政権の実態を把握できる資料がたくさん入っていた。対北朝鮮向けの風船は思ったより遠くまで移動してゆき、平壌はもちろん最近では咸鏡道まで行く場合もあるという。結局、A氏が下した結論は、金正恩政権には希望がないということだった。

「北朝鮮体制に対する不確実性。韓国社会に対する憧れもあったが、それより重要なのは生活しながらこれ以上北朝鮮体制に望めることはない。今の政権がやっていることは正しくない長くは持たない。この政権のために青春を捧げるのは嫌だ。新しく始めてみよう」。それで亡命を決意するようになった。

テ・ヨンホ公使亡命の知らせに亡命する心を固める

北朝鮮政権に失望したA氏が亡命する心を固めたのは、韓国軍の対北朝鮮拡声器放送を通じて聞こえてくるテ・ヨンホ公使の亡命の知らせに接してからだ。2016年8月、テ・ヨンホ元英国駐在の北朝鮮大使館公使は家族とともに大韓民国に亡命した。当時、テ公使はCNNとのインタビューで「私の息子は私のような生活を送ることにさせたくなかった」と亡命の理由を説明した。そして、「亡命するぞという決心を話すと、息子たちがすごく喜び、自由を得るようになったのを本当にありがたく思っていた」と明らかにした。

A氏はテ公使のような最高位層の知識人が亡命をするには、それなりの理由があると思ったと語る。

「一般の外交官であって北朝鮮では高位層だが、公使は、大使館で責任を負う人間だ。最高位層である。そんな人たちは、北朝鮮で自由を得て完全に遊んでばかりいられる職業だといっても過言ではない。ところでそんな人が北朝鮮体制につばを吐き転じるのには、それだけの理由があるじゃないですか。そのため最終的に決心してテ・ヨンホ公使の亡命の知らせを聞いた一週間後に北朝鮮を脱出しました」

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