吉田:今考えてみると……父は間違いなく思想がヤバかったと思います。『タクシードライバー』の主人公トラヴィスに影響受けすぎちゃっていたので、本当にお客さんを運ぶだけの仕事で満足していたのかどうか怪しい! Kさんはタクシーの運転手になろうと思った理由は何ですか?
Kさん:私はバブル時代までサラリーマンをやっていたのですが、90年代に入ってから会社が傾いてしまい……具体的に言いますと、92年に若くして役員を務めていた会社が倒れてしまったこともあり、家族も抱えた状態で路頭に迷ったことから、毎月35万円以上は確実と言われていた今のタクシー会社で運転手になったんですね。
吉田:ということは25、6年ほどやっている感じなんですか。完全にKさんはベテランのドライバーです。
Kさん:私なんかよりももっと長くやっている先輩もいらっしゃいますけどね。ただ、私は吉田さんがフェイスブックで路上のパーキングメーターを59分まで料金を支払わないで活用できる法律の穴を見つけて発表したことに感銘を受けまして「この人は全警察関係者を敵に回して勇気ある方なんだなぁ」と対岸の火事的に見ていた最中に、同僚たちへ59分までパーキングメーターは無料で止められる話をしたら、公園のトイレに行っている間に駐禁切られたりした面々が結構いたことも分かり、会社内でパーキングメーター活用法が浸透しました。というわけで私にとっては吉田さんは英雄なんです。その勇気ある行動や行為は免許を所有して運転する者全てが讃えてますよ。
吉田:そんな褒められてもなんも出ないですからね(笑)。それよりもトイレ行っている間にも緑のオッサンたちは駐禁ステッカーをタクシーへも容赦なく貼り付けていくんですか?
Kさん:同僚たちからの情報を集めて総合すると、駐車監視員は暴力団系の車両以外には容赦なく駐車違反扱いにしてますよ。
吉田:常に路上を主戦場にしているタクシーの運転手ならではの、そういうネタが欲しいんです!
Kさん:確かにタクシーを配車されたと同時に、その日は道路と一体化して生活しているような形ですから、パトカーなんかよりも一番路上で起こっている出来事を目の当たりにしているのがタクシーだと思いますから、主戦場と言われて「なるほど」と納得してしまいました(笑)。タクシーに乗っていると休憩も車内で取らなきゃいけないですし、食事やトイレも含めてタクシーからなかなか離れることができないのだけが、唯一のストレスになっているかもしれません。
吉田:いや、Kさん。そんなことないと思いますよ。タチの悪いお客さんもたくさんいるわけじゃないですか。そういう方々もストレスになっていると思いますけどね(苦笑)。
Kさん:ああ、そうですね(笑)。タチの悪いお客さんは酔っ払い以外ですと……「警察に捕まったら反則金を支払ってやるから猛スピードで目的地まで到着してくれ」っていうお客さんが年に数人いらっしゃいます。
吉田:へー、そんなお客さんもいるんですね。