吉田:246号線だと90年代末では最高速度50kmだったと思いますので、40kmオーバーなら赤キップで一発免停ですよね。それを29kmオーバーで青キップにしてもらったとか?
Kさん:全然違います。おそらく想像付かない結末だと思いますが、ヤクザなお客さんがタクシーから車外へ出て、白バイ隊員となにやら交渉し始めたんです。多分、結婚式に間に合わせないといけないからなどと説明していたと思うんですが、お客さんが指令して交通違反させたことを説明している感じもしました。
吉田:でも実際に運転していたKさんに責任の所在が最終的に行くわけで、お客さんが白バイ隊員へオマケしてくれるように交渉すること自体が大変珍しいですが……。
Kさん:お客さんは白バイ隊員とサシで路上で立ち話を3分ほどして戻ってきたんですが、なんのお咎めもなく白バイは走り去っていったんです。
吉田:ええええ!? ヤクザなお客さんは一体どんな裏ワザ使ったんですか?
Kさん:賄賂ですよ。白バイ隊員にお金を握らせたんですよ!
吉田:えええええ!? そんな簡単に賄賂で落とせるもんなんですか?
Kさん:お客さんいわく、現金で5万円を渡せば大抵大丈夫と言ってました。手馴れた感じで喋っていましたのでいつも賄賂で解決していたんじゃないでしょうかね。
吉田:凄いなぁ。ぶっちゃけ5万円がそのままその警察官の手に渡る……つまり臨時ボーナスが入るわけで、目の前に5万円見せられたら心が揺れ動きますよ。それと相手が白バイ隊員だからできるんでしょうね。
Kさん:それはどうしてですか?
吉田:パトカーだと相棒が一緒に乗っているから賄賂なんてことしたら2人分支払わねばならなかったり、2人いたらさすがに気まずいですからね。
Kさん:ああ、なるほど。お客さんも賄賂は基本白バイ乗っている警察官にしか行なってないような話をしていましたので吉田さんの推測は間違いないでしょうね。
吉田:大昔は駐禁なんかでも賄賂が通じていましたが、白バイ隊員を賄賂で回避したエピソードは初めて聞きました。僕的には良い話です(笑)。
Kさん:結局、お客さんは組長の結婚式に間に合いまして、さらなるボーナスで1万円貰ってしまい「交通違反のリスクを背負ってまで送り届けてくれたことに対する対価だ」と、合計2万円のチップ。お客さんとしては白バイ隊員へ賄賂で5万円、私へのチップで2万円、乗車運賃が8000円ぐらいでしたので8万円近く使ったことになりますね。相手が組長だからこそ必要経費だったっぽいですが、私にはヤクザな世界分かりません(苦笑)。
吉田:それよりもそのお客さんがもうちょっと朝早く起きて出かけていれば8万円近くの出費を抑えられたと思いますが(笑)。
<次回へ続く>
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