そもそも裁量労働制とは
今回政府が改正法案の一つとして成立を目指している裁量労働制とは、実労働時間ではなく「みなし労働時間」で時間管理をする制度です。裁量労働制では、8時間、あるいは9時間といった「みなし」の労働時間に対し、賃金が決められます。本来であれば、8時間を超える労働には、割増賃金(時間外労働手当)の支払いが必要です。残業させる場合には、割増賃金の支払いが必要であること、また三六協定を締結しその範囲内での残業しか認めないことが、長時間労働を抑制しています。
しかし裁量労働制では、実際には9時間働こうが、10時間働こうが、最初に決められたみなし労働時間に対する賃金だけ払えばよいものです。例えば「みなし労働時間」が8時間と定められていれば、実際には11時間労働していても、8時間分の賃金の支払いのみで済ませることが可能です。事業主にとってはお得で、労働者にとっては危険な制度です。そこで、対象を厳格に絞り、かつ手続きを必要とすることで、拡大を抑制してきました。今回の法案は、その対象を広げようとするものです。
ところが、一方では、事業主がとんでもない目に合うこともあります。裁量労働=いつ出勤しても、いつ退勤してもかまわないということを悪用して、遅刻、早退のしまくり、極端に言うと、8時間のみなし労働に対して、毎日1時間しか働かないといったこともあり得るのです。こういうことが増えて、裁量労働制を止めた会社もあります。
裁量労働制は、2種類にわかれています。専門業務型と企画業務型です。専門業務型はSEや記者などが対象です。今回枠を広げようとしているのは、企画業務型です。現在、企画業務型の裁量労働制は、企業の中枢部門で働いている人に限定し、企画立案などの業務を自律的に行う人にその適用を認めています。今回の改正では、その範囲を法人提案型営業などについても拡大しようとするものです。単なる商品の販売は対象外となっています。しかし、「単なる商品の販売」と「非常に高度なコンサルティング営業」の間には、大変幅の広い営業活動が含まれます。幅広い営業職のうち、どこまで対象範囲となるのか、どの程度の労働者が対象となりうるのか、政府は具体的に示していません。さらに今回、法人提案型営業に対して裁量労働制が適用可能となると、今度はなぜ個人への提案型営業ではだめなのか、という議論になるでしょう。相手が法人だから高度で、個人だから高度ではないといった区分けは困難です。法改正がいったん行われれば、裁量労働制がどんどん拡大してしまう恐れがあります。
*「専門業務型裁量労働制」とは (東京労働局)
専門業務型裁量労働制とは、労働基準法第38条の3に基づく制度であり、業務の性質上、業務遂行の手段や方法、時間配分等を大幅に労働者の裁量にゆだねる必要がある業務として、法令等により定められた19業務の中から、対象となる業務を労使協定で定め、労働者を実際にその業務に就かせた場合、労使協定であらかじめ定めた時間を労働したものとみなす制度です。専門業務型裁量労働制を導入するためには、導入する事業場ごとに、次の事項について、書面による労使協定において定めることが必要です。
また、労使協定は、労働基準法施行規則様式第13号(専門業務型裁量労働制に関する協定届)により、その事業場の所在地を管轄する労働基準監督署長に届け出ることが必要であり、労使協定については労働者に周知させなければなりません。
- 東京労働局 専門業務型裁量労働制の適正な導入のために(PDFファイル)
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