業績が好調の串カツ田中。破竹の勢いで成長しており、今のところ死角がないようにも思えます。しかし、その勢いがそがれることになるかもしれない重大な問題が経営の前方に横たわっています。というのも、同社はほぼ全店において全席禁煙にすることを表明しており、そのことで成長に急ブレーキがかかる可能性が浮上しているためです。
串カツ田中は6月1日から一部店舗を除き、全席禁煙にすると発表しました。串カツ田中では子連れの家族客も多く、ターゲットとしても重要視していることから全席禁煙を進めるといいます。また、2020年東京五輪・パラリンピックに向けた受動喫煙防止対策の動きに対応する側面もありそうです。
大手外食チェーンでは全席禁煙に向けた動きが広がっています。日本マクドナルドは14年までに全店を禁煙にしました。日本ケンタッキー・フライド・チキンやサイゼリヤ、モスフードサービスなども全席禁煙に向けて動いています。
このように大手外食チェーンで全席禁煙に向けた動きが広がっているわけですが、このことについて考察する場合、業界を一括りにして考えることが難しい側面があることを念頭に置く必要があります。というのも、業種・業態によって、全席禁煙による売り上げへの影響が異なるためです。
たとえば、家族客をターゲットとしたレストランなどは全席禁煙にすることで子連れ客の取り込みにつながったり、店の格が上がるといったメリットがあるため、売り上げの減少が限定的だったり、場合によっては売り上げが増加することも十分考えられますが、喫煙者と相性が良い居酒屋ではそういったメリットが小さく、一方で喫煙客が離れることが考えられるため、売り上げが大きく落ち込む可能性が高いと考えられます。
全国飲食業生活衛生同業組合連合会が2012年に飲食店経営を行う組合員に対して行った分煙対策に関するアンケート調査からそのことを推測することができます。同調査では、全席禁煙にした148店において全席禁煙が売り上げ増につながったと答えた割合は11.5%で、売り上げ減につながったと答えた割合は20.2%となっており、後者の方が圧倒的に多いという結果が示されています。
おそらく、居酒屋だけを取り出せば、その割合はもっと高かったでしょう。今は同調査から少し年月が経過し、そうした中で喫煙者が減ってはいますが、まだまだ居酒屋で喫煙する人は多いのが実情です。全席禁煙による売り上げ減少のリスクは依然大きいといえます。
こうしたことから、居酒屋での全席禁煙はごく一部にとどまっています。同調査によると、居酒屋で全席禁煙としている割合はわずか2.6%だといいます。レストラン(33.9%)には遠く及ばず、喫茶店(18.3%)や食堂(16.4%)などよりも低くなっています。