スプリントとT-Mobile USの経営統合は「群戦略」への転換化
今回のスプリントとT-Mobile USの経営統合話。この数年の孫社長の発言を振り返ってみると、売りたくてしょうが無い時期があったようだ。やはり、スプリントを買収した当初、T-Mobile USも一緒に買収できなかったときから、すでに孫社長としては「失敗」だったわけで、結局、スプリントを持ち続けるモチベーションが保てなかったのだろう。一般メディアでは「孫社長が携帯電話事業に飽きてきた」という書かれ方もされているが、あながち、間違いではないのかも知れない。
かつて、孫社長は、目星をつけた会社に対しては、まるごと買収してしまうという集中戦略を獲っていた。ビジョンファンドを設立してからは「群戦略」として、出資したとしても2~3割程度に止めてリスクを小さくすると言う考え方にシフトしつつある。今回のスプリントとT-Mobile USの統合によって、ソフトバンクの持ち株比率は27.4%となる。まさに「群戦略」に見合った数字となっている。
そこで、気になるのが、日本の携帯電話事業の行く末だ。ソフトバンクグループは、傘下の携帯電話事業を東証一部に上場させようと準備中だ。狙いとしては「投資を進めるソフトバンクグループと、通信事業分野において中核企業であるソフトバンクKKの役割と価値を明確に分ける」としている。
ただ、ひょっとすると、孫社長としては、ソフトバンクKKを上場させつつ、いずれはソフトバンクKKヘの出資比率を少なくするつもりなのではないか。
将来的に、携帯電話事業はリスクの高い商売になる可能性が高い。5Gの投資やMVNOの台頭、総務省の茶々入れなどを考慮すると、携帯電話事業にうまみがなくなる時期が来てもおかしくない。その時に備えて、上場し、いつでも持ち株比率を下げる準備をしているのではないか。携帯電話事業に飽きている孫社長ならそんな考えを持っていてもおかしくない。
何年か後、ソフトバンクが主要株主ではないソフトバンクKKが誕生するかも知れない。さらにその会社の主要株主が楽天なんて事になったら、もっと面白いことになるのだが。