教室で突然みんなが無視…「いじめ調査」で感じた教育現場の限界

 

調査

突然起きる無視ケースで最も多いのは、クラスやグループの中心人物が無視を主導するものであり、これには多くのケースで、原因がない。つまり、主犯の気分で突然指名されたターゲットが、遊び感覚で無視される被害にあうことになる。

そのリアクション(無視されて困惑したり泣くなど感情表現)を一定時期楽しみ、次のターゲットに移行するなど、常態化するケースが多い。世界観が狭く感受性が高い小学生高学年から中学生で起きた場合、そのダメージは計り知れず、被害が原因となって他人との距離感がうまくつかめなくなる被害者も多くいる。

ただし、子供グループはガバナンスと呼べる統制はなく、外部の接触で脆くも崩れやすい。私は被害児童であるA子さんとその保護者からまずはじっくりと話を聞き、クラス内の構造と相関図を作成した。

このクラスの場合、女子は大きく3つのグループに分かれ、グループの統制は強くはない。ただ、A子さんの属するグループは、他のグループより活発で、クラスの代表に選ばれたり、意見が強いと評価できた。

無視に関する調査では、録音は効果が薄く機器を持っているというリスクの方が高い。そのため、クラスの内部構造を紐解き、その中で協力を得やすい人物を辿って証言を積み重ねる地道な調査が最も有効なのだ。

本来はこうした内部構造やクラス内でのヒエラルキーなどは学級担任が腹で理解しているようなもので、観察力と信頼関係構築があれば、十分個別面談で情報を聞きだせるものだ。だが、このクラス担任は、そのような力量はない。教育心理学を盾に保護者に子育て論を語るような教師であるから、こうした調査は実現できなかったのだろう。

調査のテクニックとしても、そもそも無視があったのかは設問化せず、無視があった前提で質問を構成しておくことが重要なのだ。大人の汚い手段かもしれないが、一種の誘導尋問のテクニックを利用するのが答えに近づきやすいのだ。

「〇〇さんが無視されていたのは知っているよね?」ではなく、「どうして無視が起きたのかな?」の方が、質問の展開が早くなる。例えば、「〇〇さんが無視されていたのは知っているよね?」に「知らない」と答えられたらそれで質問は終了になってしまう。

「どうして無視が起きたのかな?」については、「知らない」「わからない」と答えても、無視はあったと推定できることになる。あとは、それぞれの事案に合わせて、被害者から聞いた話を分析しておいて、主観要素を外して客観要素だけで状況を組み立てて設問や確認事項を整理しておけばよい。

このケースでは、A子さんの属するグループの中心人物(B子が主導していると予想できたので、A子さんとは同じグループではないが、仲が良いクラスメイトに協力してもらうことにした。また、A子さんの母親が学校行事などを通じてよくランチをする保護者にも協力要請を出してもらい、電話とLINEで情報収集をすることにした。

情報収集の結果、B子は家庭の悩みがある一方受験組であり、強いストレス状態であるということがわかり、同グループで受験組ではないA子さんを無視しようという流れができたとのことであった。他のグループについてはA子さんに話しかけようとすると、B子に睨まれたり、呼び出されたりするので、いざこざを避けるために距離を置いたということであった。

また、男子グループはそうしたことには無頓着であったが、何か問題が起きているということは感じており、こちらも同様にイザコザに巻き込まれるのは面倒だということから、積極的に話しかけるなどはしなかったそうだ。調査をしている間に他の女子グループの子達から、A子さんに手紙が渡されたりしたことで、(内容は事情を知らずに話しかけてあげられなくてごめんねという内容)A子さんは孤立することはなかったため、別のグループに入ることになったとのことだった。

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