放送では触れていませんでしたが、親の年金で自分も生活するようになると、親を年金で入れる施設に入れよう、外部の手を借りようという選択肢もとりにくくなります。親の年金は、図らずも自分が生きていくためにも必要なお金になりますから。家があり、親の年金があれば、親子2人なんとか生活ができます。そのため、なかなか外の相談機関を頼ることもできなくなります。
放送で紹介された方々の以前は正社員としていきいき働いていた写真と、今、社会と接点を無くし、今後の見通しが立たない、孤独で、自信を失っている姿の両方を見て、胸が締め付けられる思いがしました。
親の介護を献身的に引き受けるぐらいですから、みな、やさしい目をしています。このやさしい人たちにとって、ここ10年ぐらいの間に、仕事に必要なスキルも増大し、長期ブランクがあった50代の方にとって労働条件は厳しいものになり、社会復帰が難しいのも分かります。
でも、福祉の現場や農業生産の現場等、学び直すことで、この方々が仕事をしていける道はきっとあるはずです。彼らを支援している関係者は、とにかく一日も早く社会復帰することが大事だといいます。その支援は、専門家だけでなく、地域の人にも孤立しないような協力が求められています。親を看取って孤独の中にいる方が、民生委員さんの働きかけで、地域との接点ができ、近所の方とたのしそうに会話を交わしている映像に、救われた気がします。
今後、社会の労働を担う15歳~64歳の人口が急速に減少します。すでに、労働力不足は深刻です。ですから、定年延長で高齢者にも働いてもらおう、女性も子育てと両立して働き続けられるようにしようとやっきになっているのですが、一方で、労働を担う中心にいる40代、50代にこれだけ働けていない人がいるということは、ものすごく衝撃的で、社会全体の問題です。
働いていない期間が長くなればなるほど、社会復帰のハードルは高くなります。家があって、親の年金があり、親が亡くなった後も親が残した貯金があるうちは何とか生活できてしまうので、外からは見えにくいのですが、その孤独は計り知れません。親子で暮らし、独身の子供が仕事をしないで親の介護をしているという家庭は、決して珍しくありませんが、孤立していないか、周りが気配りしていくことが必要なのです。