二階幹事長に問う。日本で「食べるのに困る家はない」発言は本気か

 

「相対的貧困」とは、普通の生活水準と比較して下回っている状態のこと。具体的には世帯1人あたりの手取り収入の中央値を基準とし、その半分未満の場合を指します。

金額にすると1人世帯では年収122万円程度で、両親と子ども2人では244万円が基準となり、4人家族であれば月収およそ20万円以下であれば貧困状態です。

「手取り20万円? だったら二階氏の言う通りじゃん。それだけあれば今晩の飯を炊くお米が用意できない』ってことはないでしょ?」

そう思う人もいるかもしれません。でも、これこそが見えない貧困と言われるゆえんです。

子供の貧困の最大の問題は「普通だったら経験できることができない」という、機会の略奪です。

教育を受ける機会、仲間と学ぶ機会、友達と遊ぶ機会、知識を広げる機会、スポーツや余暇に関わる機会、家族の思い出を作る機会、親と接する機会…etc.etc.

私たちは幼少期にこういった様々な経験を積む中で、80年以上の人生を生き抜くリソースを手に入れていきます。

ところが貧困状態にある子どもはそういった機会を経験できず、進学する機会、仕事に就く機会、結婚する機会など、「機会略奪のスパイラル」に入り込む。

子どもの貧困率が増えた背景には、シングルマザーの増加や、非正規雇用の低賃金が存在していることがわかっているので、その機会略奪が「貧困の連鎖」を拡大させる大きなリスクになってしまうのです。

それだけではありません。若干古いデータになりますが、2011年~2014年までに自殺した国公私立の小中高校、特別支援学校の児童生徒約500人について実態を調査したところ、経済的困難で将来を悲観した自殺が5%といじめの2%を上回っていることが明らかになっているのです(文科省調べ)。

完全なる負の連鎖──。政治家が「食べるに困る家は実際はない」などと平気で口にするだなんて、完全にアウトです。

子どもの相対的貧困を放置した場合、42.9兆円の社会的な損失になるという試算(日本財団)もあるというのに…。

今回、メディアは二階氏の発言を問題にしましたが、クローズアップしたのは「子どもを持つ自由」という点ばかり。「ご飯発言は二の次でした。

日本って本当に素晴らしい国なんでしょうか? 本当に幸せな国なんでしょうか?

正直、私は最近わからなくなりました。みなさんのご意見もお聞かせください。

image by: Shutterstock.com

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※『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』(2018年7月4日号)より一部抜粋

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