EVシフトもガラパゴス?日本の住宅事情がEV車の普及を妨げている

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世界的に加速するガソリン車からEV車へのシフト。日本もその流れに乗らないわけには行かないのですが、そこでクローズアップされてくるのがチャージャー(充電)の問題です。今回のメルマガ『週刊 Life is beautiful』では、著者で世界的エンジニアの中島聡さんが、読者からの質問に答える形で「米国とは違う形で起こると思われるEV車への本格的なシフト」を予想し、そこからチャージャー問題の解決を試みるとともに、国内のEV分野を引っ張る日産の進むべき方向を提案しています。

※ 本記事は有料メルマガ『週刊 Life is beautiful』2018年7月10日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め初月無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール中島聡なかじまさとし
ブロガー/起業家/ソフトウェア・エンジニア、工学修士(早稲田大学)/MBA(ワシントン大学)。NTT通信研究所/マイクロソフト日本法人/マイクロソフト本社勤務後、ソフトウェアベンチャーUIEvolution Inc.を米国シアトルで起業。現在は neu.Pen LLCでiPhone/iPadアプリの開発。

質問コーナー「電気自動車のチャージ問題について」

読者からの最初の質問です。

世界的な電気自動車への流れは止められない中で、日本国内での普及において、大きな障害となるのがチャージャーの問題だと思ってます。

 

そもそも200v電源の普及が進んでないし、それを簡単に導入できるのは戸建住まいの人だけです。都市部人口の多くはマンション住まいで、既存の立体駐車場に電源を配置するのはそう簡単ではないし、かなりの設備投資が必要なうえ、その電気代や設備投資を誰がどう負担するのかも大きな問題となります。平場の駐車場では盗電の問題もあるし、設備投資したくないからこその平場の駐車場な訳で、駐車場の大家さんはきっと動かないでしょう。

 

富裕層向けマンションならそういった設備投資も行えるでしょうが、中間所得層向けの電源完備立体駐車場ではそもそものパイが小さすぎてビジネスにならなそうな気もします。

 

本来官民一体となって電気自動車社会へのシフトを行い、先進国は電気自動車、途上国はガソリン車という二極化の波の中、日本だけがいつまでも取り残されてガソリン車となってしまい、つまりは日本車のガソリン車が先進国で売れない時代(=日本の自動車産業が先細りの時代)が来てしまわないようにしなければいけないのですが、官に任せるとこんどは電気の安定供給の話になってしまい、また原発再稼働とかいう方向にしか行かないような気もします。

 

そういう意味で、民間企業が電源インフラの整備になんらかのアイデアを見出し、ビジネスにしていく必要があるのですが、この辺りに何かお考えはお持ちでしょうか?

中島さんからの回答

チャージャーの問題は、米国でも(シアトルダウンタウンのような)都市部では起こっていますが、それが電気自動車の普及を妨げる、というよりは、駐車場スペースや渋滞の問題と合わさって、Uberのようなシェアリング・エコノミーが急成長するという形になって現れています

電気自動車が普及しているのは、米国でも、人々が一軒家に住んでいる「住宅地」であり、特にテスラに関して言えば、「高級住宅地を中心に急激に伸びている、という状況です。米国の場合は、富裕層は若い人でも高級住宅地の一軒家に住む傾向があるので、電気自動車の普及にはプラスになっています。

私が東京に持っているマンションでも、住民の一人がテスラを購入し、地下駐車場への充電設備の設置をリクエストしていましたが理事会がなかなか動かないのに痺れを切らして、別の解決方法を見つけてしまいました(会社の駐車場に設置したそうです)。

日本の場合、富裕層が東京に集中している上に、その中でも(まだ普及し始めたばかりの)電気自動車を買うようなアーリーアダプターはマンション住まいが多いので、このままでは、それが電気自動車の普及の妨げになるのは確かだと思います。

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