なぜ「バカの壁」養老孟司は今になって死を説くようになったか

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ヒトなんて古くさいアナログ機械はいらない──。そう語るのはベストセラー『バカの壁』でもお馴染みの解剖学者、養老孟司氏。今回の無料メルマガ『クリエイターへ【日刊デジタルクリエイターズ】』で編集長の柴田忠男さんが紹介しているのは、養老氏が綴った「ひとつの真理」についての著作です。

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半分生きて、半分死んでいる

養老孟司・著 PHP研究所

養老孟司『半分生きて、半分死んでいる』を読んだ。東京農業大学の昆虫学研究室に行ったら、学生が寄ってきて「養老さんじゃないですか、もう死んだと思ってました」と言うではないか。少し言い過ぎかと思ったらしく「もう歴史上の人物ですから」と付け加えてくれた、というが……。

学校の先生方の集まりがあって、講演を依頼された。控え室でひとり待機していたら、若い先生が来て「先生、間もなくお迎えが参ります」と言われた。間もなく80歳だから、お迎えが来るのは分かっている。その意味でのお迎えは困らないが、あなた方がお困りになるのでは? (急死したわたしの)講演時間をどう消化するのか。

そう思ったが年の功でむろんむきつけにそうは言わない。素直に謝辞を述べる。若い先生はなにも気づかない。ともあれ、この「お迎え」とはいい言葉だ。鷹揚な養老先生でも、疲れて機嫌が悪くなると文句をいいたくなる。「発展をお祈りします」って、いったい誰に祈るのか神頼みは無責任ではないか。あんたは具体的に何をしてくれるんだ。でも、このいい加減さが日本文化の良さだ。

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