やがて、変化が起きる。子どもたちは、自分の家のようにわがままが通用しないとわかると、実の父母のことを考えるようになった。それぞれの親も「うちの子が辛い思いをしたり、いじめられたりしていないか」と心配した。すると今、目の前にいる他人の家の子どもに心配が向き始めた。
結局誰の子でも、同じ人間の子どもであり、愛さなければならないとわかり始めた。その頃を見計らって、元の家庭に戻すと、親も子もすっかり性格が変わり、村全体が他者のことを考えるようになったという。
つまり幽学は、村人の個人的な部分最適を求める姿勢を、体験によって全体最適を考える姿勢に矯正した訳である。それが村の協力体制を作りだし、結果的に村人それぞれの幸せにもつながっていったという話である。
結局、自分や自分の子ども(あるいは担任している子ども)だけがよければいいという考えは、破滅の道である。
自分以外の他をも大切にすることが、結果的に自分の幸せにつながる。考えればすぐわかるが、我が子が通うクラスの他の子どもの大部分が不幸なら、我が子も不幸になるに決まっている。学級担任なら、自分のクラスだけが良くて周りはだめだという考えがあれば、それは子どもにも伝染する。人を見下したり、自分の所属以外の周りに無関心な子が育つ訳で、結果的に、自分のクラスの子どもも不幸である。
そして、逆もまた然りである。だから、学級づくりでは子ども同士のつながりをつくるのが、大前提として大切なのである。学級経営や家庭教育を考える上での一助になればと思い、紹介してみた。
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