ブームから定着へ。ナイトプールを「夏の定番」にする巧みな戦略

 

都会のオアシス、ANAインターコンチネンタルホテル東京

ホテルでは、今年ナイトプールの大幅な企画の変更を行ったのが、赤坂のANAインターコンチネンタルホテル東京である。4階にある「ガーデンプール」が、名門シャンパンメゾンメゾンマムと提携。新発売のロゼシャンパン「マム グラン コルドン ロゼ」をイメージしたピンク及び、マムのブランドカラーの赤と白の装飾、照明を全体に施している。営業は6月23日~9月30日。

ANAインターガーデンプール

ガーデンプールの演出。ANAインターコンチネンタルホテル東京HPより

いかにも女性向けで、男性は行きにくい雰囲気になっているが、今年だけの特別仕様とのことだ。顧客も女性が9割残りの1割がカップルと、後述する「東京プリンスホテル」に類似した客層になっていたが、お盆に入って以降は従来の顧客層であるファミリーが増えている。来年、コラボを解消して元の顧客が戻ってくるのか、興味深い。

併設の「プールサイドスナック」ではマムのシャンパン、ワイン、スムージー、かき氷、ピッツァ、小海老のオーロラソースなどのメニューを揃え、テイクアウトにてセルフで運んでプールサイドで味わうことも可能だ。

ANAインタープール

「ガーデンプール」は都会のど真ん中にありながら、赤坂アークヒルズの緑豊かな環境に恵まれ、都会のオアシスを感じさせるラグジュアリーな雰囲気が特徴。プールサイドにピンクのチェア、プールの水面にはマムの巨大なバルーンが浮かべられている。毎週木曜日はDJイベントを行い、リゾート気分を盛り上げている

しかし、猛暑で水温が高まり過ぎると、さすがにレジャーとしては厳しいと感じる人が多いようだ。

また、4階オープンエアスペースでは「メゾンマム」との提携で、ビアガーデンならぬシャンパンガーデンも開催している。高感度の女性に「メゾンマム」の良さを認知させれば広告としては成功で、宣伝として考えるのならこのようなやり方もありなのだろう。ANAインターコンチネンタルホテル東京は来年も何かコラボを決めて、ナイトプールを宣伝メディアに使うことに徹するのだろうか。

ブームの牽引役、東京プリンスホテルは昼のプール利用客が増

昨年、女性ファッション誌「CanCamとコラボして、独特な“ゆめかわ”空間を創出し、2万人が来場。ナイトプールブームを牽引した「東京プリンスホテル」は、コンセプトは変えず、昨年とは違った新しいインスタ映え用の撮影スポットや大型フロート(浮き輪)の投入を行っている。今年はナイトプールの開催期間は7月7日~9月17日。

 

一昨年から「CanCam」はナイトプールをプロデュースしているが、昨年「品川プリンスホテル」から東京タワーの見える「東京プリンスホテル」に移転して、より幻想的な表現力が増した。

ゆめかわ空間、東京プリンスホテルのナイトプール

背後に東京タワーを望む。「CanCam×Tokyo Prince Hotel Night Pool」2018公式HPより

しかし、「東京プリンスホテル」広報によると、「今年はむしろ夜より、昼のプール利用客が増えている」とのこと。プールと宿泊と、ブッフェ、和食、中華と3つのレストランから選べるディナーがセットになった宿泊プランが、ファミリーに受けているようだ。暑すぎてプールにいるのが厳しくても、クーラーの効いた屋内でのんびり過ごせる。

東京プリンスホテルの今年のテーマは「ピンクディスコ」。同HPより

東京プリンスホテルの今年のテーマは「ピンクディスコ」。同HPより

「東京プリンスホテル」のナイトプール場合、10代後半から25歳くらいまでの女性が9割残りの1割がカップルといった偏った顧客層。ホテルの中にあるコンビニにはプール上がりの顧客が行列をつくっており、どうやら宿泊や食事にまで回るお金は持ち合わせていないらしい。

暑すぎる夏にも対処できる京王プラザホテル

京王プラザホテルの「人魚姫マーメイド)」をテーマにした各種レストランとのコラボ企画も、食事の内容は異なっているが、昨年から継続しているテーマだ。ナイトプールの開催は6月23日~9月17日。

新宿副都心にある京王プラザホテル・スカイプール

新宿副都心にある京王プラザホテル・スカイプール。京王プラザホテルHPより

5,000円~7,000円くらいの価格帯で、プールとスイーツブッフェ、プールとフレンチ&イタリアンなどのディナーが楽しめる。ナイトプールだけの利用で平日4,000円、休日と指定日5,000円掛かるので、食事とセットにしたほうが断然得な価格設定となっている。

京王プラザプールとセットとなるマーメイドのスイーツブッフェ。同HPより

プールとセットになるマーメイドのスイーツブッフェ。同HPより

この戦略で、会社帰りのOLカップル大学生を多数集客し、成功してきた。若い人たちにプールをきっかけに食事も手軽に体験してもらい、ホテルをもっと身近に感じて使ってほしいという願いが込められている。特に京王プラザホテルは充実したレストラン街を有しており、昨今のビジネスホテルによくあるレストランもないホテルとは、一線を画している。

今年ほどの高湿度の猛暑になれば、高層ビルの影にあるプールなので他のホテルのプールよりは涼しく感じるはずが、それほどでもなかった可能性がある。しかし、屋内で涼めるレストランとのセット券であるならば、顧客は一通りインスタ用のスマホ撮影が済んでしまえばさっさとプールから上がって冷房の効いたレストランでゆっくりすればいい。

つまり、暑すぎる夏にも対処できるプランニングが京王プラザホテルの強みなのである。

以上、ナイトプールの取り組みは、昨年の冷夏、今年の猛暑のような気象条件になるべく左右されないような屋内などで過ごす食事などとのセットプランが重要になってきている。それか、ANAインターコンチネンタルホテル東京のように広告メディア化するのに徹するか、或いは暑さ寒さを忘れるほど行きたいよほどの魅力あるコンテンツがあるかどうかである。ブームから定着へと、各施設の頭の使いどころだ。

image by: 【公式】「CanCam×Tokyo Prince Hotel Night Pool」2018(撮影/川原崎宣喜)

長浜淳之介

プロフィール:長浜淳之介(ながはま・じゅんのすけ)

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兵庫県出身。同志社大学法学部卒業。業界紙記者、ビジネス雑誌編集者を経て、角川春樹事務所編集者より1997年にフリーとなる。ビジネス、IT、飲食、流通、歴史、街歩き、サブカルなど多彩な方面で、執筆、編集を行っている。共著に『図解ICタグビジネスのすべて』(日本能率協会マネジメントセンター)など。

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