ブームから定着へ。ナイトプールを「夏の定番」にする巧みな戦略

 

東京サマーランド外観

演出に夜景評論家を起用した東京サマーランド

今年大きくナイトプールの演出が変わったのが、東京都あきる野市の東京サマーランド。これまでも夏の夜間営業でライトアップを行ってきたが、今年は演出に夜景評論家の丸々もとお氏を起用。「空気・水・光」をテーマに世界各国の絶景をイメージした、フォトジェニックで幻想的な風景をつくり出している。

インスタ映えする大道具、小道具があるというのではなく、屋内、屋外のプール全体に上質な夜景を出現させる非常に大掛かりな取り組みである。ナイトプールの営業は7月14日~9月9日(7月17日~20日を除く)。

絶景スポットは8つあるが、特に屋外プールの高く水が噴き上がる噴水を活かしたナイアガラの滝とオーロラは壮大で、背景にしてスマホで写真を撮る人が絶えない

サマーHP オーロラ/ナイアガラの滝-001

インスタ映え必至のオーロラ/ナイアガラの滝。東京サマーランド公式HPより

屋外と屋内のプールをつなぐ藤棚のトンネルでは、グラデーションに彩られた水墨画のような世界が現出している。

サマーHP 藤棚

演出効果バツグンの藤棚。同HPより

また、屋内プールではタイのチェンマイで、11月の満月の夜に行われるコムローイ祭をイメージし、夜空に放たれて浮遊する無数のランタンを表現した。

コムローイ祭のランタン。撮影:長浜淳之介

コムローイ祭をイメージしたランタン照明の演出。撮影:長浜淳之介

さらには、地下温浴プールの湯遊大洞窟では15分毎に約5分間、イタリア・カプリ島の「青の洞窟をイメージした神秘的な青い照明に染まる。

青の洞窟。同HPより

青の洞窟。同HPより

この他にも、各所に光のショーや写真が撮れるスポットを配し、ナイトプールの主たる顧客である20~30代の女性の趣味に合う迫力のある演出を行っている。

日本最大級の流れるプールや、スリーフォール、トルネードなどの絶叫マシンで、家族、子供、学生に人気のある東京サマーランドであるが、夜は大人のムードで女性のグループやカップルに来てもらおうと、異なった客層を狙ってファンを広げようという試みだ。

実際に女性客が多く、女性同士のグループが半数以上を占めてはいるが、幅広い客層を持つテーマパークの特性で、男性客、ファミリー、シニアの顧客も合わせて4割くらいはいるので、極端に偏ってはいない

「ドーム内の屋内プールがあるので、熱中症対策にはなるのではないか。天候によって大崩れしないのがウチの強み」と東京サマーランドの広報では自信を深めている。

9月にはナイトプールの絶景を活かした婚活イベントが予定されており、プールで涼む、インスタ映えスポットがあるといった動機以外でも集客できる仕組みをつくろうとしている。

一昨年8月に起きた切り裂き魔事件の影響で、昨年は集客を落としていたが、今は入場時に手荷物検査、金属探知器によるチェックが課されており、空港並みの厳しいセキュリティとなっている。復活なったと言えるだろう。

冷たい井戸水プールが心地よい、としまえん

遊園地では、としまえんも今年、ナイトプールを強化してきた。開催日は7月27日~9月2日の金・土・日とお盆期間の8月13~16日。

一番の変化は、クリエイティブ集団「ネイキッドが手掛けるプロジェクションマッピングイベントを、「ナイアガラプール」で実施したことだ。自然に囲まれた「ナイアガラプール」の森の精が奏でるミュージカルを制作し、思わず歌って踊りたくなるようなファンタジーの世界が楽しめるようになっている。

としまHP プロジェクションマッピング

プロジェクションマッピング。としまえんHPより

また、「ナイアガラプール」ではペアフロート(2人乗りの大型浮き輪)のレンタル、光る球の演出もあり、プロジェクションマッピングイベントをゆったりと、幻想的な雰囲気で鑑賞できる。

としまHPプール美女

ペアフロートが夜のプールを盛り上げる。同HPより

「波のプール」ではLED電飾のコスチュームを身にまとったライダーが、音楽に合わせて約十メートルの高低差で水上パフォーマンスを行う、「ハイドロスター ウォーターショー」も開催している。

ハイドロウォーターショー。同HPより

ハイドロウォーターショー。同HPより

飲食では、夜限定のメニューとして、日本初上陸のスウェーデン生まれスペイン育ちのフローズンカクテルN’ICE」を販売。ローストビーフ、パンケーキなど、プールサイドではあまり売っていない本格的な食事メニューにチャレンジしている。

「ナイトプールはいい形で来ていて、プールから花火を見る人も多いです。しかし、今年は暑すぎて昼間は思ったほど集客できていません」と、広報担当者はもっと入って欲しかったというニュアンスだ。

としまえんではプールに井戸水を使っているので、気温が40℃近くあっても水温は他の競合プールよりは低い。実際のところ、水温が30℃を超えると水の中にいても大して涼しくもない。ぬるま湯のようなプールに一度でも入ってしまうと、もう二度とプールに行きたくなくなる人も出てくるかもしれない。熱帯夜では、夜になってもなかなか水温も落ちない。

プロジェクションマッピングやハイドロスター ウォーターショーは見応えがあって素晴らしいが、今年のような猛暑だと井戸水による気持ちいい水温のアピールも必要のようだ。

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