なぜ血みどろの「米中貿易戦争」は日本にとって良いことなのか?

 

2. 工場再編

そして中国は経済会議で、米国と血みどろの戦いを覚悟した。それが、通商交渉の拒否である。李克強首相は、人民元を下げないで価値を維持し、人民元通貨圏を拡大するようだ。米国の為替操作国指定を恐れているわけではないと感じる。

米国企業は、中国産部品を使えなくなり、世界的なサプライチェーンの再構築が必要になる。今回の関税UPで日本企業の中国工場から米国への出荷も少なくなる。このため、日本企業も工場の再編が必要になる。そして、次に中国の輸入品全部に25%の関税UPになり、米国への輸出品は、どこで作るかという問題が起きる。

米国は、輸入品を撲滅するべく、同盟国からの輸入品に対しても関税UPをするというので、欧州も日本も中国と米国の中間に立つしかない。そして、人民元・ユーロ・円通貨圏拡大という、ドル基軸通貨圏を侵食することを共同で行うことになりそうだ。地経学では、基軸通貨を取ることが勝つことになるので、米国の衰退を加速させる。

それと、米中が血みどろの戦いになると、欧州と日本は中国市場の攻略という意味では、米国企業の抜ける分だけ有利になる。漁夫の利になる。13億人の市場を米国は放棄することになる。それにより、米国企業の衰退を加速させる。

そして、米企業のバーゲンセールが来る。内部留保を積み増している日本企業は、積極的に買うことだ。ダウ株価も大幅な下落になる。地経学の基本を無視したトランプ大統領により、米国は衰退を早めることになる。

3. 日米通商交渉の武器

米国の問題点が明確化してきた。税金を低くしたことによる米国の財政赤字が拡大して、より一層の米国債を発行する必要があるが、最大の購入者である中国が少なくとも買わないことになる。次の購入者は日本であり、本来は日本に通商交渉では強く当たれないはず。

それを強く当たるなら、日本も米国債を買わないし、売却も考えるというしかない。米国債金利上昇が起き、米国経済は逆回転して、11月までに景気が後退することになり、中間選挙も負けることになる。このため、トランプ大統領は11月までは交渉を継続して、景気後退を避けるはずで、交渉を引き延ばせるはずだ。

米国が、目標を中国に定めたなら、日本を米国の味方にするべきなのである。という意味では、米中貿易戦争が血みどろになったことは、日本にとっては良いことになる。

もう1つの問題点は米国産農産物、LNGなどの米輸出品の売却先確保である。この部分でも関税的には日本の工業製品の関税は0%であり、米国は2%で、畜産物の関税は、日本は平均約35%、米国は平均25%であり、TPPレベルの関税にすると米国と同等程度になる。

非関税障壁での安全性能などについては、安全性に問題がないなら、法律を変える必要がある。畜産品は消費者の選択の幅を確保するために完全自由化にするべきである。

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