真実を明かそう。「国が年金を無駄遣いした説」は本当か?

 

さて、国が年金積立金を使っていろいろ施設を作ったのは、年金受給生活に入った人が単に余生を送るだけじゃなくて、有意義な生活を送るのに必要な場所を提供すると共に、一般の人たちの余暇にも役立てようとしたんです。

なんでそんな事に財源使い始めたのかというと、昭和40年代~50年代の経済成長期にあわせて労働時間の短縮とか休日の増加があり、休みや自分の時間は増えたけど、余暇を有意義に過ごす保養地とかレジャー施設がありませんでした。あったのは温泉地みたいな観光地。そこで、国は当時の厚生年金保険法により年金積立金を財源に被保険者とかの福祉の向上を図るための事業ができるってなってた。

グリーンピアは昭和55年に開業されて運営は別に委託して行われてきましたが、平成17年には廃止されて民間や地方自治体に譲渡されました。もちろん、運営のあり方に全く問題がなかったわけではないでしょうけど、「赤字続きでやってらんねー!!」から廃止したのではなく、この辺も時代が変わってきたからです。民間企業が類似の事業を提供し始めたんです。東京ディズニーランド(昭和58年)とかハウステンボス(平成4年】という大きい施設もできた。

また、昭和24年4月から1ドル=360円のスゴイ円安の固定相場制でずっと来ていたのが、昭和46年8月のニクソンショックで一気に円高になっていき、昭和48年2月に変動相場制に移行し(この時点で1ドル=265円】、だんだん昭和50年代くらいから海外旅行にも行く人が増加してきた。ちなみに、昭和60年のプラザ合意の時にまた1ドル=230円くらいだったのが、一気に140円台くらいにまで円高に進んだ。海外旅行なんて昔は富裕層のみが出来るような事だったのがお手軽なものとなってきた。

だからわざわざ国が年金積立金財源を使って保養施設とか作る必要は無くなってきたから廃止したんです。

グリーンピア事業のように、年金積立金を財源として被保険者の福祉の向上を図る事業は年金福祉還元事業と呼ばれました。代表的なものとしては、年金住宅融資事業年金福祉施設事業

年金住宅融資事業は当時は住宅ローンやってる民間金融機関はほぼ無かったから、多くの人がこの年金住宅融資を受けました。大体累計融資件数は400万件くらいで、融資額は25兆円くらい。あ、融資は破産とかないなら返済されるものですよ(笑)。

年金福祉施設事業は被保険者の福祉の向上のために公の会館とかを建設運営する事業。昔よく見かけませんでした? 厚生年金病院とか厚生年金会館とか、健康保養センターとか、社会保険センターとか。役割としては医療施設文化施設健康スポーツ施設などの役割を果たす施設。今はホームページ上では何とか病院の横に旧厚生年金病院とか記載されてたり、何とかセンターの横に社会保険センターとか書かれてたりしますが。

また、年金住宅融資事業については、バブルが崩壊して経済の停滞期に入って低金利になったから民間金融機関が住宅ローンに力を入れるようになってきたんですよ。となると、公的な年金住宅融資事業は必要性が無くなってきますよね。また、年金福祉施設も民間と競合するのは新設を行うべきではなかったので廃止や民間譲渡が進みました。

というわけで、グリーンピア事業が赤字続きでやってられんわ!! という理由からやめたというのではなく、経済の変化や民間企業の活動の活発化で年金積立金を使って事業を行う必要性が無くなってきたからだったんです。だから平成17年でグリーンピア事業はすべて廃止された。

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