科学者が断言。シャンプーに「経皮毒」なんて存在しない理由

 

炎症と経皮毒は無関係

それでもシャンプーで炎症が起きるのは経皮毒があるからでしょ!と言う人もいるでしょう。それは脱脂力と皮脂に関係が深く、体にラウリル硫酸ナトリウムが浸透して悪さをしているのではなく、脱脂されたことにより、皮膚が正常な代謝を行うことが出来なくなって、炎症を起こしているだけです。

体に蓄積されたり、薬剤による刺激で炎症が起きているものを「経皮毒」と論点をすり替えて一括で考えてしまうことが問題というか、そもそもこの造語を提唱してるインチキの本質です。

肌の質や皮脂の分泌量というのは、睡眠や食生活などの生活リズム、年齢によって刻々と変わります。毎日使っていた洗顔料だと顔がピリピリして、セッケンやお湯洗いに変えた…なんて経験がある人は多いでしょう。つまり、顔の皮脂が変わるのと同じで頭皮の皮脂の量も変わり、または、体質によっては、一部の成分が炎症を起こすこともありますが、それらは全て、皮膚表面で起こる反応であり、シャンプーを変えたり止めれば収まる話です。経皮毒とは関係のない話です。

皮膚の保湿はスキンケアでは重要なファクターの1つです。女性が毎日化粧水を付けているのは、ある程度の年齢からは、皮脂が戻るまでに時間がかかるようになるため、風呂上がりなどのバリア機能が下がったときにつけておくとよい…というわけです。

同様に頭皮の過剰な脱脂は頭皮にダメージとなると言えます。故に、安いシャンプーの多くに含まれる界面活性剤は、低刺激になっているとはいえ、大して汚れることのない現代人にはそれでも脱脂しすぎな場合が多いのです。その場合は、脱脂力の低い(洗浄力も低い)アミノ酸系シャンプーなどに変えるか、シャンプーを使うのは2、3日に1回にして、それ以外はお湯で流すだけにする…などの個人的な対応で十分になんとかなる話です。

簡単に解決できる問題を「経皮毒があるから」にすり替え、ぼったくり商品を買わせる……ここまでが経皮毒ビジネスの内幕です。

経皮毒を軸に、多くのシャンプーは毒…と称して、高額なシャンプーを売る業者の中には措置命令や業務停止命令を受けている会社がゴロゴロしています。そうしたシャンプーも成分を見ると、ただのアミノ酸系シャンプーであったり、何千円、何万円もする成分は含まれていません。いいとこ1ボトル500円くらいが妥当な成分です。そして、経皮毒という不安を煽り、マルチ商法を駆使して、「体に優しい自然派シャンプー」を売りつけるわけです。

結論としては「経皮毒」、この言葉を見たら、それ以下に書かれていることは信用しない。

悪質商法を見逃さないこれからのリテラシーの1つとして定着させていくことが大事なのではないでしょうか。

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シリーズ15万部以上の不謹慎理系書「アリエナイ理科ノ教科書」著者。別名義で「本当にコワい? 食べものの正体」「薬局で買うべき薬、買ってはいけない薬 」などを上梓。学術誌から成人誌面という極めて広い媒体で連載多数。

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【著者】 くられ 【発行周期】 週刊

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