アメリカを「仮想敵国」に。仏マクロン大統領「悪魔」発言の裏側

 

いまの欧州は第1次世界大戦直前のよう

同じ日、英国やポーランドでも、同様の式典が開かれました。英国では、第1次世界大戦で生命を賭して戦った兵士たちを悼み、ポピーの花のバッジを付け、エリザベス女王の隣席のもと、式典が開催されました。しかし100周年を迎えるに当たり、初めて“遺族”たちも、思い思いのメッセージを掲げてパレードに参加しました。(注:これまではあくまでも英国軍と退役軍人のパレードのみでした)。

Brexitの行方はまだまだ不透明ですが、100周年パレードを別途ロンドンで開催したのは、「英国」として自立していくための気概を示したのではないかとの見方がされています。マクロン大統領の「欧州防衛軍」構想には、英国は組み込まれていますし、それは共同主唱者のメルケル首相も同じ理解のようですが、肝心の英国は、「協力する」と表明するに留め、まだ“参加”(コミットメント)については発言していません。これまで以上に欧州に距離を置いているようにも感じます(もちろん、国内の対欧州をめぐる争いが、英国としての態度を表明できない理由なのですが)。

ポーランドについては、同じく欧州から距離を置き、独自に第1次世界大戦終結から100周年式典を執り行いました。常にポーランドは、EUにおいても、フランスやドイツと距離を置き、頭痛の種となりながら、妥協を引き出す外交をしてきていますが、最近になって、より民族主義的な対応を強めるハンガリーやルーマニアと連携を深め、欧州における分裂要因の核になりつつあります。

そこに常に“北”のEUに不満を持つイタリア、ギリシャ、スペイン、ポルトガルなどとの連携が強まる中、北西EUと東南EUという図式が明確になりつつあります。欧州の“分裂”というとBrexitに目が行きがちですが、このEUの2極化も欧州の統合に対し大きな懸念となってきました。

特に、最近になってよく言われることとしては、第1次世界大戦終結から100周年を迎える2018年は、第1次世界大戦がはじまる直前の状況に似ているということです。これまでの2度の世界大戦のときの様に、ユーゴスラビア(バルカン半島)が火薬庫にはなっていませんが(とはいえ、その火種には事欠かないのですが)、上述のように、EUの二極化が進むことで、火種が燻っています

そこに、ロシアが付け込み、難民問題を盾にトルコが影響力を発揮してきています。欧州防衛軍構想は、そのような外的な影響を排除し、“共通の懸念”であるはずの安全保障を欧州レベルで担い、再度分裂を避けるべきとのアイデアなのですが、出所がフランスとドイツということもあり、東欧諸国・南欧では支持を得ていません。

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