医師が警告。糖尿病患者の関節異常は「糖尿病性手関節症」も疑え

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糖尿病で恐ろしいのはさまざまな合併症を引き起こすこと。そして、糖尿病が引き起こす疾患のすべてが解明されているわけではありません。メルマガ『ドクター徳田安春の最新健康医学』では今回、最近になって注目されている「糖尿病性手関節症」を紹介。まだ医師の間でもあまり知られていないようで、糖尿病を患う人が指や肩の関節に異常を感じたときには、医師へ相談した方がいいようです。

糖尿病には数々の合併症が。関節の病気も

糖尿病が増えています。それに伴って、慢性的に血糖のコントロールが不良な糖尿病ではさまざまな合併症が起こりますので、糖尿病の合併症も増えています。このうち、心筋梗塞や脳梗塞、末梢動脈疾患などをきたす動脈硬化症の病気に加えて、糖尿病特有の合併症である腎臓、神経、眼の合併症が問題です。

腎臓では糖尿病性腎症をきたし、慢性腎不全では透析導入が必要となります。神経では糖尿病性神経障害と呼ばれ、末梢神経や自律神経が侵され、手足のしびれや起立性低血圧などをきたします。眼では、糖尿病性網膜症で失明することがあります。

このように、糖尿病の合併症では、腎臓、神経、眼を侵すものが有名ですが、体の他の組織を障害する病気が最近注目されています。それは関節の障害です。主な症状は関節の可動域の制限です。指や肩の関節が好発部位です。関節周囲の皮膚が厚く硬くなりますので、ものをつかまえたり、握ることができにくくなったり、肩を上げることができにくくなったりします。

糖尿病性手関節症とは?

糖尿病で関節の可動域が制限されるのは、長期間にわたって血糖が高くなった人でみられます。血液中のブドウ糖が関節周囲の組織に存在するコラーゲンというタンパク質に結合し、異常なコラーゲンが増加して、関節とその周囲の皮膚が硬くなるものと考えられています。

この糖尿病の合併症は、指の関節にくることが多いので、糖尿病性手関節症と呼ばれています。しかし、この病気が注目されてきたのは最近のことであり、医師の間でも意外と知られていません。そのため、内科や整形外科の医師の元で別の疾患と思われていたケースもあります。特に、鑑別に紛らわしい疾患には、関節リウマチや強皮症などの膠原病、そしてパーキンソン病などがあります。

最近、私のセカンドオピニオン外来で診た患者さんは、60才代男性で会社の社長さんでした。仕事が忙しいために、ここ数年間は健診を受けていなかったとのことでしたが、最近から全身の関節に硬さがみられていました。他の病院を受診すると、パーキンソン病の疑いがあるといわれ、パーキンソン病のお薬を勧められていました。そこで、この患者さんにある診察をすることで、糖尿病性手関節症であることがわかりました。

祈祷者徴候とは?

糖尿病性手関節症によく見られる診察所見に、祈祷者徴候があります。これは簡単な診察であり、祈るときの祈祷者のように、単に両手を合わせてもらい、これを観察するだけです。このときに指の関節が伸展できないために、両手掌をきちんと合わせることができないのです。英語サイトですが、参考写真はこちらです。
http://clinical.diabetesjournals.org/content/19/3/132.figures-only

私のセカンドオピニオン外来に訪れた患者さんをこのように診察してみると、パーキンソン病特有の関節の固縮はなく、関節可動域の制限があることがわかりました。血糖を調べてみると1デシリットルあたり約300ミリグラムとかなり高く、ヘモグロビンA1cも約10パーセントであり、長期間糖尿病にかかっていたのです。糖尿病は、高血圧のように、長期にわたり症状が出ないことが多いので、健診では血圧と血糖を調べてもらうことをお勧めします。

この患者さんには、血糖コントロールの重要性を説明して、糖尿病の治療をスタートしました。関節の症状に対しては、関節の可動域を正常化させる理学療法を受けることをお勧めしました。

糖尿病では手関節症以外にも、糖尿病に特有の病気ではありませんが、さまざまな手の症状をみることがあります。これらには、ばね指(指の腱鞘炎による弾発指をきたす)、デュプイトラン拘縮(手掌腱膜が肥厚・収縮し、皮下の硬結、手指の屈曲拘縮、伸展障害をきたす)、手根管症候群(正中神経が手首で圧迫されてしびれや握力低下をきたす)などがあります。糖尿病を持つ人が手に異常を感じたら、かかりつけ医に相談しましょう。

文献
Yoganathan K et al. Prayer sign due to diabetic cheiroarthropathy. BMJ 2017; 359: j4878

image by: CHAjAMP, shutterstock.com

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