さて心機一転、財布の中身を入れ換えようと思った矢先、ある異変に気付いた。札入れの部分が浅いのである。札が入らぬほどではないが、うっかり気を抜いて入れると札の頭が数ミリ飛び出る。札入れの口をしっかり開き、紙幣に最も強度が生じるような角度でしっかり持って、ポケットの底の部分にグリグリと挟み込むようにして入れないと到底納まらない。それでもギリギリで、財布とお札の縁がほぼ同じ高さである。何故あと5ミリ大きく作れないのか、不思議でならなかった。
そのような次第だから、私のニュー財布から出たお札はもれなく片方の縁がピロピロと波打つようなしわになる。この財布にピン札を入れる時の切なさといったらない。本当に残念な寸足らずぶりである。
その残念財布を使い始めてから一週間くらい経った頃だろうか、ある考えが頭に浮かんだ。「ドル紙幣って小さかったような…」。その啓示に促されるままネットで調べる。
日本の札=幅76mm
米ドル札=幅66mm
何ということか。アメリカならあと1cmも余裕があったのだ。どう考えてもこれが本来であるに決まっている。
となれば、問題はそのブランドの日本法人である。仮にも公式ストアで売るからにはその商品が何の注意喚起も無しに市場投入してもいいものかどうか吟味すべきであろう。然るに、それを怠るからこういう事態が起こる。日本で役に立たぬ以上、日本においてこの商品は不良品である。堂々と不良品を売って傷付くのは自社のブランドイメージである。こうして消費者の信頼は失われていくのであろう。 さらにむかつくことに、製造国を見てみると日本円とも米ドルとも関係のないアジアの国であった。それならいっそのこと、インターナショナルサイズにすればよかろう。
今後、日本の何処かで、ピロピロ縁のお札を見かけたらそれはこの残念な財布を出身とするものかもしれない。上述のような次第である。お札に罪はない。せめて額面通りくらいには可愛がってやってもらいたいと思うのである。
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