池田教授ほんまでっか?否定された進化論「用不用説」が再浮上

 

例えば、東北地方に分布するマークオサムシでは、湿地に生息するものは後翅が発達し、乾燥地に生息するものは後翅が退化する。青森県の十三湖の周辺に分布する個体群では、後翅の退化程度は様々で、湖に近い湿った環境に生息するものでは後翅が良く発達していたという。また、アカガネオサムシでも、北海道の湿地に産するものは後翅が良く発達し、本州の乾燥地に生息する個体では後翅が退化する。

同様なことは北海道に産するコブスジアカガネオサムシでも見られ、同じ北海道産でも、生息環境の違いにより、後翅の退化程度には大きな違いがみられ、良く発達した後翅を持つ個体もいれば、極端に小さく退化した個体もいる。

大澤たちは後翅の退化は種の成立年代の古さとは関係なく、生息環境によりもたらされたと推論している。というのはオオオサムシ亜属(アオオサやオオオサ:亜属は属の下の分類単位)は種形成の年代がアカガネオサムシやコブスジアカガネオサムシより新しいにもかかわらず、後翅の退化が顕著であるからだ。

また青森県十三湖付近のマークオサムシの個体群は後翅の退化の程度がまちまちであることから、後翅の退化が、単純な遺伝子の突然変異で起こったわけでもなさそうだ。

洞窟に生息するゴミムシの中には眼が退化しているものが多い(メクラチビゴミムシという名がついている)。これも眼が不用になったので退化したに違いないが、暗闇に適応するために感覚毛が発達したりしていて、単に眼だけが退化した訳ではない。

オサムシの後翅の退化はこれと異なり、他の形態には全く違いは現れず、単に後翅が退化しただけという不思議なものだ。もしかしたら、本当に不用になった器官はある特殊な環境条件の下では、世代を追うごとに徐々に退化するのかもしれない。

image by: Charles Thévenin [Public domain] Jean-baptiste lamarck2

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