【公共工事】「ダム撤去で新ビジネス誕生」米国ニュースから考える「処分・整理ビジネス」実践法

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今日の発想源 作るも壊すもビジネス

ビジネス発想源 Special 第222号(2014年12月17日号)

今、世界の先進諸国では、ダムの撤去に動き出しているのだそうです。

そう、河川上流で水を溜めているあのダムです。

日本では30年も40年もダム建設の計画がまだ続いているケースが多いというのに、もう外国では撤去しようとしているのです。

例えば、ワシントン・ポストの記事よると、アメリカでは、2006年から2010年の5年間で241基のダムが撤去されたそうで、撤去数はそれ以前の5年間より40%増なんだとか。

大型ダムを建造するのは、例えば水力発電や水の安定供給の意味がありますが、時代が進んで発電や給水の技術も変わっていくから、ダムの需要と意義も昔とは変わっていきます。

そんなダムを撤去するというのは、単純に「元に戻る」というだけではありません。

ワシントンのエルワ川では、2年半の歳月と3億2500万ドルの費用をかけてダム撤去と河川再生の事業を行ったところ、その間に少なくとも760種類の仕事が生まれ、事業終了後もレクリエーションや旅行業など446種の通年的に継続する仕事が生み出されたそうです。

「せっかく作ったものを壊すなんて、もったいない」
という感情も多くの人に生まれてがちですが、実際にはそうやって、せっかくのものを壊すことでまた新たな価値が生まれていくものなのです。

ダム撤去ではまだまだ遅れている日本ですが、熊本県の球磨川にあった荒瀬ダムは、2010年の水利権の失効と更新手続きのタイミングで撤去工事が進められることが決まりました。

これが日本初の本格的なダム撤去事例で、環境的にどうなるのかが注目されているのですが、早くもダム撤去が途中でも効果は現れているらしく、例えば、ダムの土砂が海に流れて干潟が再生され、貝類の漁獲量が増えているんだそうです。

そうなると、また魅力ある物産が増えるわけで、産業がまた一つ盛り返すことになります。

20世紀が「無尽蔵に増やす」時代だったとすると、21世紀は「整理する」時代だと言えます。

壊したり元に戻したりするのは、無駄なことだったかというとそうではなく、一つの経験として未来に役立つことであり、次の発展への整理になるのです。

だから、新しい改革のために壊す時には、
「せっかく作ったのにもったいない」
「せっかく続いたものなのに」
なんていう未練を持たずに、
「それによって得られるものがたくさんある」
と意識するようにします。

そしてまた、そのような意識を持てる人は、たくさん増えてしまったものに対して、
「もうこの分野は飽和状態で、勝てない……」
と悲観するのではなく、
もうこの分野は飽和状態だから、これから整理・処分していく案件が増えて、めちゃくちゃビジネスチャンスじゃないか!

と思えるようになります。

たくさん増えてしまったものを整理・処分する新しいビジネスが生まれることが分かるのです。

コンビニやカフェが増えていった時代に、
「あれがどんどん撤退するとしたらどうするか」
と考えられた人間が、閉店後のコンビニ物件をどんどん確保していって別の業態の展開を加速させていきました。

整理する、壊すという発想が、これからの時代にどんどん新たなビジネスチャンスを生むのです。

2015年には、そんな新たなビジネスチャンスが皆さんの周りにも見つかるのではないでしょうか?

【今日の発想源実践】(実践期限:1日間)————

・自分の仕事に関係することで「増えすぎたもの」「もう頭打ちのもの」にはどのようなものがあるか。思いつく限りノートに列挙する。
・その多すぎるものを「処分する」「整理する」というビジネスが生まれるとしたらどのようなビジネスモデルになるか。簡単にノートにまとめる。

 

ビジネス発想源 Special第222号(2014年12月17日号)

著者/弘中 勝
読者数10万人のメールマガジン『ビジネス発想源』の著者。全国の企業にマーケティングを指導している。研修・講演等実績多数。著書に『会社の絞め殺し学』(祥伝社)、『アイデアひらめくビジネス発想源』(技術評論社)、『顧客と語らえ!』(現代書林)など。
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