相次いだビッグネームの引退。美しく尊敬できる引き際を考えた件

 

おそらくそれは、そういう人の生き方の中に、自分のいる世界への愛を見るからだと思う。「自分のいる世界」という言い方が分かりにくければ「自分を育ててくれた世界」「自分に居場所を与えてくれた世界」と言い換えても構わない。若干、我田引水的な物言いになってしまうが、この文脈で行けば、後者、即ち引き際潔い人というのは自分への愛が強い人だと思う。

そもそも勝負の世界にあっては、古き雄は必ず新しき雄に打ち倒される運命にある。自分もそうやって雄たるを得たに違いない。そして「自分のいる世界」を愛していればこそ、自分が古き雄になったという自覚があれば、新しき雄を出来るだけ苦しめ、やがては一敗地にまみれて落ちて行く覚悟をするものなのである。この執着をどうやら自分は美しいと感じているようなのである。

そういう訳もあって、自分は最年少記録より最年長記録の方により感銘を覚える。前者は天賦の才のなせる業、後者は執着のなせる業である。

どうも昨今の日本では最年少を愛でる傾向にありはしないか。勿論、それはそれで素晴らしいことではある。しかし、これからの世の中、最年長記録の凄さに注目すれば、年寄りだらけの日本も少しは面白くなってくるのではないだろうか。

あいつ、まだやってんのか」「若い奴、だらしねえな」といった言葉を聞くたびに、パッと明るい希望を感じ、ポッと温かい心持ちになる。誰もがそんなふうになれれば、と今切に願うのである。

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ここにあるエッセイが『8人ばなし』である以上、時にその内容は、右にも寄れば、左にも寄る、またその表現は、上に昇ることもあれば、下に折れることもある。そんな覚束ない足下での危うい歩みの中に、何かしらの面白味を見つけて頂けたらと思う。

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