それでも、安倍首相は通常国会初日の1月28日、施政方針演説で消費増税について国民の理解を求め、次のように発言した。
アベノミクスはいまなお進化を続けている。GDP600兆円に向けて歩みを進めていく。…企業の設備投資は14兆円増加し、20年間で最高となっている。5年連続で今世紀最高水準の賃上げが行われた。経団連の調査ではこの冬のボーナスは過去最高だ
なんという認識の乖離だろう。いや、なんという欺瞞か。経団連の調査など、一部大企業の実態を示しているに過ぎない。
経団連は2018年の春季労使交渉の最終集計結果をまとめた。大手企業の定期昇給とベースアップ(ベア)を合わせた賃上げ率は2.53%で、1998年以来20年ぶりの高水準となった。(日経2018年7月10日)
安倍首相は、昨年10月30日の参院本会議でも、「五年連続で今世紀に入って最も高い水準の賃上げが実現し、この春の中小企業の賃上げ率は、過去二十年間で最高だ」と胸を張った。
中小企業の賃上げ率を調べたのは連合である。
連合が6日発表した2018年春季労使交渉の最終集計によると、定期昇給とベースアップ(ベア)を合わせた賃上げ率は平均2.07%で前年を0.09ポイント上回った。…中小企業の賃上げ率は20年ぶりの高水準になった。(日経2018年7月7日)
2018年12月28日公表の労働力調査によると、就業者数は6709万人。連合傘下の労組に加入する組合員は約700万人だ。
そのうち中小企業の組合員が何人かは知らないが、連合の調査をもって「中小企業は20年ぶりの高水準」と言って憚らないところが、いかにも安倍首相らしい。
景気判断のもととなる統計調査の信用が崩れ落ちたばかりというのに、テレビから「景気回復戦後最長」のニュースが流れ、茂木経済再生大臣が「今月で74か月、(景気回復は)戦後最長になったとみられます」とコメントする白々しさ。庶民の実感とかけ離れた景気回復PRは、何の効果ももたらさない。
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