安倍官邸が統計不正キーマンの厚労省官僚を即座に更迭した理由

uttii20190205
 

日を追うごとに与党の旗色が悪化する観のある厚労省の統計不正問題。国会での野党の追求にも政権サイドは防戦一方ですが、この一連の状況を新聞各紙はどのように伝えているのでしょうか。ジャーナリストの内田誠さんが自身のメルマガ『uttiiの電子版ウォッチ DELUXE』で詳細に分析した上で、問題の本質追求を試みています。

「統計不正」問題、新聞各紙の伝え方

ラインナップ

◆1面トップの見出しから……。

《朝日》…「野党「政府、解明をブロック」」
《読売》…「休業補償 7月追加給付」
《毎日》…「追加給付工程 急場しのぎ」
《東京》…「関東地銀8割 手数料増」

◆解説面の見出しから……。

《朝日》…「統計不正 政権逃げ腰」
《読売》…「アベノミクス 影響巡り攻防」
《毎日》…「厚労省の『統治』問題視」
《東京》…「厚労省 報告遅れの連鎖」

ハドル

国会の審議が熱を帯びてきました。もちろん、統計不正問題です。安倍首相はスケジュールの合間にレクの連続なのでしょう、既にヘロヘロの状態。辛うじて精気を保っているふうに見えました。閣僚は野党の追及をかわそうと、わざと見当違いの答弁を繰り返したりしていて、到底、正面から問題を受け止める姿勢とは言えません

各紙、色々書いていますので、きょうも「統計不正」です。

真相解明を妨害する政府

【朝日】は1面トップで衆院予算委の審議に関する記事と追加給付に関する記事。関連で2面の解説記事「時時刻刻」、4面は国会質疑の焦点採録、14面社説。見出しから。

1面

  • 野党「政府、解明をブロック」
  • 統計担当の前幹部招致を与党拒否
  • 追加給付 11月から 雇用保険

2面

  • 統計不正 政権逃げ腰
  • 衆院予算委 実態解明進まず
  • 野党、招致拒否を批判
  • 「アベノミクス偽装」にも照準
  • 与党は政府対応を「宣伝」
  • 厚労相擁護し官僚に矛先
  • 行政監視しない与党は論外

14面

  • 統計不正解明
  • 政権与党の本気を疑う(以上、社説)

uttiiの眼

1面トップは、見出しが「野党政府解明をブロック』」という刺激的なもの。閉会中審査には政策統括官として出席し答弁していた大西康之氏を更迭したことの意味は、まさしくこの予算委で野党の質問に晒させないがため。政権は、万が一にも、大西氏が官邸からの圧力や自身の忖度を口にすれば大変なことになると恐れての「人事」であり、与党が参考人招致にも応じないという頑なな態度を取っている理由も、簡単に想像がつくというものだ。

もう一つ、1面には「追加給付 11月から」という見出しも躍っている。ここには、雇用保険の過少給付に対する「埋め合わせ」としての追加給付が、9ヵ月も先にならないと始まらないという意味が隠れているのだろう。統計不正によって過少給付となった人は延べ2,015万人。そのうち、雇用保険の失業給付に関わる人は1,942万人と圧倒的な多数を占める。その中でもおそらくは圧倒的多数を占める「受給が既に終わっている人」に対しては、4~10月に対象者を特定する作業を行い、判明した住所とそれ以前に分かっている住所に送付、受け取り口座を指定してもらってから振り込むという手順になっている。サラッと「対象者を特定する作業を行い…」などと書いたが、この作業は「消えた年金問題の時の復旧作業に次ぐ難事業で、住所が分かっていない人は1,000万人もいる。《朝日》は、「追加給付」の大宗が、難事業を経て行われるこの人たちに対する給付だという点を捉え、「11月から」と報じているわけだ。

2面「時時刻刻」は、予算委員会での追及についての分析。野党は大西康之前政策統括官の招致拒否を責め、また麻生財務相の「鶴の一声」で賃金の伸びが大きくなるような工作をしたのではないかとの疑惑の指摘(安倍氏は「できるわけがない」と否定)など。

与党側は小泉進次郎氏が、政府対応の説明の呼び水になる質問や閣僚らへのエールを繰り出す始末だったという。

野党質問の時の様子を国会中継で一部見たが、厚労相の答弁ぶりは特に酷いように思った。ほぼ答弁拒否に近いものまであった。

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