小4女児虐待死で浮き彫りになった、子どもの権利「後進国」日本

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千葉県野田市で発生した、10歳の小4女児虐待死事件が連日、テレビやネット上で大きく報じられています。多くの人が心を痛めたこの事件は、なぜ起きてしまったのでしょうか。そしてなぜ、日本という社会は罪のない小学生の命を救うことができなかったのでしょうか。健康社会学者の河合薫さんが自身のメルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』で、その原因に鋭く迫っています。

※本記事は有料メルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』2019年2月6日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め初月無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:河合薫(かわい・かおる)
健康社会学者(Ph.D.,保健学)、気象予報士。東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。ANA国際線CAを経たのち、気象予報士として「ニュースステーション」などに出演。2007年に博士号(Ph.D)取得後は、産業ストレスを専門に調査研究を進めている。主な著書に、同メルマガの連載を元にした『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアムシリーズ)など多数。

攻撃と罵倒では救えない

千葉県野田市で小学4年の栗原心愛さん(10歳)が死亡した事件で、両親が傷害容疑で逮捕されました。

冷水シャワーをかけられ、首を両手でわしづかみにされ、亡くなる1年以上前には学校のいじめアンケートで、父親による暴力被害を訴えるなどSOSを発信。ところが父親の恫喝に屈した教育委員会がアンケートを父親に開示、さらに児童相談所では一時保護したにも関わらず、2か月余で自宅復帰を認めていました。

少女の胸の内を考えると言葉もありません。なぜ、必死のSOSを受け止め、守れなかったのか。

昨年の3月に目黒区で当時5歳の少女が両親に虐待され、死亡した事件でも、香川県の児相で一時保護したものの家庭へ戻し、一家が東京に転居した後に起きた悲劇でした。

メディアでは「オトナたちが裏切った」「児相の知識不足、連携の悪さ」ばかりがクローズアップされていますが、日本が世界からは国家レベルで児童虐待していると批判されていることについては、なぜか報じません。

2010年「国連子どもの権利委員会」は公式な報告書内で、児童養護施設と里親制度をめぐる日本の体制を批判。また、2014年には国際人権NGOのヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)が、日本の社会的養護制度を検証する調査報告書を発表し、そのタイトルが「夢がもてない日本における社会的養護下の子どもたち─」という、実に厳しいものでした。

つまり、日本では虐待の相談件数は年々急増しているにも関わらず、発見し保護する体制はもちろんのこと子どもたちを保護するための環境が足りていないのです。

虐待の数をカバーできるだけの人材の確保、具体的な体制や政策の整備、さらには、施設の不足や里親の不足。この状況を是正することなくして、子どもたちを守ることはできません。「悲劇」が繰り返されるだけなのです。

奇しくも青山の児童相談所建設騒動がありましたが、木だけを見ずに森をみよ!「子どもがかわいそう」という言葉で正義を語るより、「問題のそもそもに目を向けなくてどうする?と思えてなりません。

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