高齢化が進む日本と切っても切り離せない介護の問題ですが、「看取り後」にも残された者を悩ます、相続上の問題が生じるようです。今回の無料メルマガ『税金を払う人・もらう人』では著者で税理士の今村仁さんが、そんな問題を解決すべく今年7月に改正される法律について詳しく紹介しています。
2019年7月から始まる≪特別寄与料請求権の創設≫
亡き長男の嫁が、長男の父である被相続人の介護にいくら尽力していたとしても、現行制度では、長男の嫁は相続人ではないため、被相続人の死亡に際し、相続財産の分配にあずかれません。
他方、被相続人が死亡した場合、他の相続人(長女や次男等)は、被相続人の介護を全く行っていなかったとしても、相続財産を取得することができます。
不公平感は満載だと思いますので、この辺りが、2019年7月から改正されます。
民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律について
2018年7月6日、民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律が成立しました。
民法のうち相続法の分野については、昭和55年以来、実質的に大きな見直しはされてきませんでしたが、その間にも、社会の高齢化が更に進展し、社会情勢は大きく変化してきています。
そこで、今回相続法が大幅に見直されるのですが、その1つに、「特別寄与料請求権の創設」があります。
上記では、相続人以外の親族が、被相続人の療養看護等を行った場合、一定の要件のもとで、相続人に対して金銭の支払を請求することができることになります。
先ほどの例では、相続開始後、長男の嫁は、相続人に対して、金銭の請求をすることができるようになります。
特別寄与料と相続税
昨年発表された2019年度税制改正大綱では、特別寄与料に係る課税については、次のとおりとされました。
- 特別寄与者が支払を受けるべき特別寄与料の額が確定した場合には、当該特別寄与者が、当該特別寄与料の額に相当する金額を被相続人から遺贈により取得したものとみなして、相続税を課税する
- 上記1の事由が生じたため新たに相続税の申告義務が生じた者は、当該事由が生じたことを知った日から10月以内に相続税申告書を提出しなければならない
- 相続人が支払うべき特別寄与料の額は、当該相続人に係る相続税の課税価格から控除する
- 相続税における更正の請求の特則等の対象に上記1の事由を加える
※ 2019年度税制改正大綱は、国会を通過するまでは確定事項ではありませんのでご留意ください。
image by: Shutterstock.com