大ブレの経団連。小泉元首相との公開討論から逃げ回る理由

 

経団連事務局の面々は“民僚”と呼ばれるように、企業団体の職員でありながら官僚の体質が色濃い。おそらく、中西氏の年頭発言に困惑し、1月15日の会見で修正するよう仕向けたに違いない。政界と同じで、経団連会長の挨拶や会見の原稿、メモを書くのは“民僚”たちだ。

経団連加盟の原発関連企業には経産省を中心として官僚が群がるように天下りし原子力ムラを構成している。

もちろん中西氏が会長をつとめる日立製作所も例外ではない。昨年7月には元経産省事務次官の望月晴文氏が社外取締役ながら取締役会議長に就任した。望月氏は経産省OBのなかでも、とりわけ熱心な原発推進派だ。

当メルマガ2013年6月6日号にその望月氏が登場したことがある。

元文部大臣の有馬朗人氏、元経団連会長の今井敬氏とともに「エネルギー・原子力政策懇談会」なる民間有識者団体をつくり、原発再稼働を求める提言書」を直接、安倍首相に手渡したのだが、実はこの「提言書」、経産省の官僚が作成していたのだ。

いわば経産省OBと原子力ムラの有識者がグルになって世間に原発再稼働をアピールしたパフォーマンスにすぎなかった。そのメルマガ記事の一節。

経産省事務次官だった望月が原子炉メーカーである日立の社外取締役として天下りし、彼のかつての部下であるエネ庁官僚に原発再稼働の提言を作成させる。この癒着関係は分かりやす過ぎて感動的なほどだ。(中略)実は彼こそが、2001年の省庁再編にともない、あの悪名高き原子力安全・保安院の設立に関わった「生みの親」なのである。

この提言の後、「エネルギー・原子力政策懇談会」なる団体がなんらかの活動をした形跡はない。あくまで、「再稼働キャンペーンのための急ごしらえの団体だったことがわかる。

日立は、望月氏を取締役会議長という重要ポストに起用して、企業統治改革を進めようとしている。

経団連会長である中西氏は、自社の取締役会と経団連事務局の両方から経産省的思考のプレッシャーを受けている。自らつくったその罠のなかで、英国原発建設の失敗という苦い経験を生かすことすらできず、もがいているようにも見える。

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