マスコミ報道と真逆。中国が東シナ海で極めて抑制的に行動する訳

 

参加者は、米国とヨーロッパから集まった中国と一線を画そうという組織の指導者たちでしたが、私の考え方に同意してくれた印象でした。尖閣諸島周辺での中国公船による領海侵犯についても、中国の国内世論に向けて「日本に対して弱腰ではない」ことを示し続ける目的だと、私と同じ見方も聞かれました。

この会合に出席して感じたことは、台湾独立の志向が強い民進党政権においても、中国との関係について、まなじりを決して何かを叫ぶといった姿勢は影を潜め、例えば日米との連携強化によって中国を脅威ではない存在に変えていこうとする、とても成熟した姿勢が目立ったことでした。

私個人としても嬉しいことがありました。私を基調講演者に推挙してくれたのが台湾側の気鋭の安全保障問題研究者で、私が2017年夏に出した『日米同盟のリアリズム』(文春新書)を読み、そこで書かれた方向に北朝鮮の姿勢が変化して米朝首脳会談に至ったことを評価してくれた結果だったということです。

日本と中国との関係も日中平和友好条約締結40年(2018年)の節目を迎え、さらに良好な関係を深めていかなければならない時期にありますが、その日中関係をよい方向にコントロールしていくためにも、中国に文句をいわせないような日台の連携強化が求められていると感じました。

いま陸上自衛隊は日本防衛の空白域だった南西諸島に部隊配備を進めています。与那国島の沿岸監視隊に始まり、石垣島(警備隊、地対空・地対艦ミサイル部隊)、宮古島(同)、奄美大島(同)の部隊ですが、必要とあれば宮古海峡を両側から地対艦ミサイルの射程圏内に収めることが可能になります。そして台湾側も北部から東岸にかけて、地対艦ミサイルを重点配備しています。これは中国海軍を挟み撃ちにする日本と台湾によるチョークポイント戦略にほかなりません。

これが日台間の実質的な連携なのです。日本と台湾が沿岸の防衛を強化することについては、よほど関係が悪化していないかぎりは中国もクレームを付けることはできません

このように、日本としてやるべき事を着実に進め、中国の、そして北朝鮮の動きに空騒ぎをしない国に脱皮していく必要性について、台湾の会合を通じて肝に銘じることになりました。(小川和久)

image by: vadimmmus, shutterstock.com

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地方新聞記者、週刊誌記者などを経て、日本初の軍事アナリストとして独立。国家安全保障に関する官邸機能強化会議議員、、内閣官房危機管理研究会主査などを歴任。一流ビジネスマンとして世界を相手に勝とうとすれば、メルマガが扱っている分野は外せない。

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