シリーズ累計5,000万本という驚異的な数字を叩き出しているシャンプー「BOTANIST」。その新たなラインナップが注目を集めています。今回の無料メルマガ『MBAが教える企業分析』では著者でMBAホルダーの青山烈士さんが、株式会社I-ne社のユーザーへのアプローチ方法を分析するとともに、その戦術・戦略を紹介しています。
顧客が抱える悩みに対する「アプローチ」の違い
今号は、リリースしたばかりですが注目を集めている「シャンプー」を分析します。
● 株式会社I-neが展開している人気のシャンプーブランド「BOTANIST(ボタニスト)」の新たなラインナップ「マイボタニスト」
戦略ショートストーリー
髪の悩みを解決したい方をターゲットに 「独自の診断システム」に支えられた「自分に合ったシャンプーが見つかる」等の強みで差別化しています。
約2分間、9つの質問に回答するだけで、髪の悩みを解決してくれる自分に最も適したシャンプーとトリートメントを提案してくれることが、顧客から支持されています。
■分析のポイント
ユーザーの悩みを解決するというのは、ビジネスのセオリーですが、アプローチの仕方は、大きく二つ考えられます。一つが、いま目に見えている「症状に対処するアプローチ」、もうひとつが、その症状が現れた「原因に対処するアプローチ」です。例えば、「肩こり」という症状に悩んでいる場合、
- 症状に対処するアプローチ
→肩もみ、マッサージ、湿布 など - 原因に対処するアプローチ
→運動不足を解消するための水泳や姿勢を正すための筋トレ など
といった形で整理できます。
「マイボタニスト」がどちらに該当するかというと「原因に対処するアプローチ」と言えそうです。なぜなら、「My BOTANIST 診断システムTM」は毛髪診断士の方がカウンセリングしているのと同じようなことをシステムでできるようにしているわけで、毛髪診断士の方が、クライアントの症状から原因を探っていくアプローチに近いためです。
一方で通常の「ボタニスト」は、「症状に対処するアプローチ」と言えます。なぜなら、既存のラインナップは、ボリュームが足りないと感じている方向けの「スカルプ」やボリュームを抑えたいと思っている方向けの「モイスト」などがありますが、それぞれ、顧客は自分の症状に合わせて選択するものとなっているからです。
顧客から見た場合、「マイボタニスト」は悩みの「原因」を解消することが期待できますが高価なものです。一方で、通常の「ボタニスト」は、「マイボタニスト」の3分の1以下の価格で、症状を改善してくれるものの、悩みの「原因」が解決されるわけではないものです。
また、企業から見た場合、「マイボタニスト」は、顧客のニーズに応えることができますが、製造に手間ひまがかかります。一方で、通常の「ボタニスト」は、個別ニーズに応えることは難しいですが、大量に生産することができ、小売店など販路を拡大することもできます。
上記のように、顧客と企業、双方から見て、どちらのアプローチも一長一短ありますので、どちらのアプローチが良い悪いという話ではありません。
今号で伝えたいことは、「ボタニスト」ブランドが示しているように、企業もしくはブランドを拡大するために、顧客が抱える悩みに対する「アプローチ」を増やすというのは有効な打ち手であるということです。
今後、「ボタニスト」ブランドがどのように拡大していくのか注目していきたいです。
※追伸
いま目の前の仕事に対して、自分が「症状に対処するアプローチ」をとっているのか、それとも「原因に対処するアプローチ」をとっているのか、意識するだけでも、頭の中が整理されると思いますのでおすすめです。