なぜ、無印良品は銀座に店を出したのか?
ではなぜ、土地の高い銀座に無印良品は、このような大型店舗を構えたのでしょうか?銀座は一等地なので、集客力がある立地だと言えますが、このような大規模店舗を維持していくのは、容易ではないと思われます。
まずは話題性があるので、自社のブランド価値を高めることができます。ユニクロも銀座の一等地に店舗を出していますし、前号の特集でも書いたように、ナイキやユニクロはニューヨークの5番街に出しているのも、考え方は同じ。
ブランド確立の第一歩は、認知度を上げること。同時に「想起」すなわち、一番に思い出してもらえるようにすることが重要です。そこに、新しさを加えることで、ブランドイメージの一新になります。
もちろん売り上げもしっかりと上げなければなりません。そのための工夫が随所に見られました。これまでの店舗にあまり併設してこなかった、生鮮食品、カフェ、ホテルを、ここに構えています。
生鮮食品とカフェは、消費者の人たちが買いに来る回数が多い商材です。文具、雑貨とアパレルが中心の無印にとって、生鮮食品とカフェを入れることで、来店頻度をあげる狙いもあるのでしょう。
カテゴリーを追加するということは、頻度に加えて、滞在時間を増やすことにもつながります。Eコマースも同じですが、商店においては、店内での滞在時間が長いほど、売り上げ増につながります。
食品のカテゴリーでは、イートインができるカフェに加えて、前述のベーカリー、そして、日替わり弁当も販売しています。さらに、この日替わり弁当は、中央区、千代田区、港区の一部に、デリバリーもするとのこと。この3区はオフィスも多く、BtoCだけではなく、BtoBにも対応することで、売り上げを平準化できる工夫をしています。
また、ホテルは中国の深セン続いて、無印にとって2つ目のホテルとのことです。ホテルのコンセプトは「アンチゴージャス、アンチチープ」とのこと。このコンセプトは、まさに無印良品の全体のコンセプトと、マッチしています。
ブランド認知がしっかりとできたら、次は、イメージを固めることで、「選ばれるプロダクト」を目指します。いわゆる、差別化・独自化です。各種報道によると、泊まるというよりも、家に住んでいるような感覚で宿泊できるような、部屋になっているそうです。内装のいたるところに無印良品の商品も使われているようですので、この点も購買につながると思われます。
単に「店で何かを売る」というのではなく、楽しんでもらいながら、買ってもらう、泊まってもらう、食べてもらう、というこれからの商業施設の在り方だと感じます。