軍事アナリストが懸念。自衛隊「ハイブリッド戦」を不安視する訳

 

陸上自衛隊としては、2004年のスマトラ沖地震の時に輸送艦くにさきにCH-47大型ヘリ3機、UH-60中型ヘリ2機を搭載する形で派遣しましたが、陸軍仕様のCH-47はローターを外してしか船積みできず、現場海域で組み立てて試験飛行をするなど、手間取ったという苦い経験があり、ハイチでは見送ることにしたのです。

そのとき、私は海上自衛隊が10機備えていたMH-53掃海ヘリなら陸自のCH-47と同じくらいの大きな輸送能力もあり、しかも海軍仕様なのでローターを折りたためることを思い出し、海自の航空集団司令官を経験した同期生に聞いてみました。すると、掃海具を下ろせばそのまま派遣できるという回答があったのです。

ハイチでは、米国の海兵隊が同じ機体のCH-53ヘリを飛ばしており、海自のMH-53を派遣した場合にも、部品の補給や整備の面でも米海兵隊の協力をうることができたのです。

残念ながら、そのときは既に手遅れで実現に至りませんでしたが、いくら統合幕僚監部ができたといっても、陸自の部隊を派遣するときに海自のヘリのことが視野に入っていなかったのでは、縦割りを絵に描いたような有り様で、統合運用ができていないということだったのです。これは統合幕僚監部設置から4年経った段階でした。

れが、自衛隊の取り組みが途上にある宇宙・サイバー・電磁波の領域にまで拡がり、陸・海・空の組織の統合ばかりでなく、複合的な取り組みが必要となれば、どんなことになるのか

まずは徹底的に頭の体操(図上演習)を行い、そこで明らかになった問題に優先順位を付け、組織・人事・装備を調えていくことが突きつけられています。

言うは易く行うは難し。本当に新しい時代の安全保障問題に向き合えるのか、防衛省・自衛隊の真価が問われています。(小川和久)

image by: YMZK-Photo / Shutterstock.com

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地方新聞記者、週刊誌記者などを経て、日本初の軍事アナリストとして独立。国家安全保障に関する官邸機能強化会議議員、、内閣官房危機管理研究会主査などを歴任。一流ビジネスマンとして世界を相手に勝とうとすれば、メルマガが扱っている分野は外せない。

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